FXYD5(ディスアドヘリン)は細胞膜を一回貫通する糖蛋白質で上皮細胞接着分子Eカドヘリン発現調節を介して細胞‐細胞接着に関与すると考えられている。細胞接着能が著しく低下し予後が極めて不良な甲状腺未分化癌において、FXYD5の発現の検討と、強制発現およびノックダウンによる細胞接着能の変化およびプロテオーム解析により不明な点が多かったFXYD5関連蛋白質について検討した。 甲状腺未分化癌由来培養細胞:HTC/C3、TCO-1、8305C、8505C、ARO、FRO、甲状腺分化型癌由来培養細胞株: TPC-1、NPA-1、WROの全種培養細胞においてFXYD5の発現とEカドヘリンの消失をウェスタンブロットにて観察した。EカドヘリンRNAは発現しており、Eカドヘリン消失はpost-transcriptional down regulationだった。共焦点レーザー顕微鏡でFXYD5は細胞膜に局在することを観察した。FXYD5高発現細胞株を対象としRNA干渉(RNAi)を行い、RNAi効果が恒常的に持続する細胞株を10クローン作製した。これらクローンにおいてFXYD5の蛋白質発現の消失をFXYD5ノックダウン細胞は上皮様形態に変化した。また遊走能はFXYD5ノックダウン前と比べて低下し、FXYD5の発現は甲状腺未分化癌細胞の遊走能亢進に関与すると考えられた。プロテオミクス解析を用いてFXYD5ノックダウン細胞における蛋白発現変化の観察したところ、S-100蛋白質とRAS蛋白質の増加を確認した。FXYD5は、これら蛋白質発現を制御している可能性が示唆された。
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