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2012 年度 実施状況報告書

MDSにおける異常クローン拡大メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 24659458
研究機関東京大学

研究代表者

真田 昌  東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20529044)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード骨髄異形成症候群 / RNAスプライシング / 遺伝子変異 / 造血幹細胞 / 老化
研究概要

RNAスプライシングに関わる遺伝子群に、骨髄異形成症候群MDSでは高頻度かつ特徴的に変異が生じていることが明らかとなった。しかし、MDS例において、本変異獲得細胞が選択されるにも関わらず、本変異体をマウス造血幹細胞に遺伝子導入し、行った競合移植実験の結果は、変異獲得による生物学的優位性は観察されず、むしろ細胞増殖などには負に働いていると考えられた。そこで、本研究では、何故、MDSでは本変異を獲得した細胞がクローナルに増殖し得るかを明らかとすることで、MDS特有の分子病態の解明を目指す。
スプライシング分子変異はTET2の不活化変異としばしば合併することから、TET2 条件的欠失マウスを用いて、TET2が不活化された細胞において、代表的なスプライシング分子変異であるU2AF1ならびにSRSF2変異導入細胞が優位性を獲得するか競合的骨髄移植実験を用いて検証した。すなわち、造血幹細胞特異的にCreを発現させるMx-Creマウスと交配し、pIpC投与によりTET2を欠失させた後に、CD34-KSL(造血幹細胞)を採取し、レトロウィルスベクターを用いて遺伝子導入を行い、致死量の放射線を照射したマウスに、移植を行った。野生型マウス由来に比し、TET2ヘテロ欠失マウスを用いた移植の末梢血キメリズム解析では、競合細胞に対するキメリズムは高くなったが、依然として野生型ならびに空ベクターに比し、キメリズムは低く、優位性は確認できていない。現在、同マウスの経時観察を続けるとともに、ホモcKOマウスでの移植実験を施行済みであり、今後、キメリズムなどの解析を行う予定である。また、MDSは高齢者に多いことから、幹細胞老化の影響を考え、生後1年以上の高齢B6マウス由来の造血幹細胞を純化し、スプライシング分子変異体を導入、移植実験を行ったが、これまでの観察期間内では、優位性は観察できていない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

全エクソンシーケンス研究により、RNAスプライシングに関わる一連の遺伝子群の体細胞変異がMDS例において高頻度かつ排他的に認められることが明らかとなり、MDSの発症にRNAスプライシングの異常が関わっていると推測されているが、その分子メカニズムは明らかとなっていない。MDSで観察されるRNAスプライシング変異体のレトロウィルスベクターによる遺伝子導入実験では、予想に反し、vitro、vivoともに細胞増殖は阻害された。そこで、本研究では、細胞にとって不利と考えられる遺伝子変異を獲得した細胞が、何故、MDSにおいては選択され得るのか、マウスモデルを用いて明らかにすることを目指している。今年度は研究計画に基づき、TET2欠失マウスまたは高齢マウス由来の造血幹細胞を用いた移植実験を行い、経時的に末梢血キメリズム解析することにより、変異体導入細胞が生物学的優位性を獲得し得るかを評価した。TET2欠失細胞では、変異体導入細胞においても、競合細胞に対するキメリズムが、野生型マウスを使用した実験に比し上昇するが、この効果は、変異体導入細胞以外でも観察されており、変異体による優位性は観察できていない。当初の実験計画は、概ね順調に行われているが、これまでに得られた実験結果では、MDSの病態解明につながる新たな知見は得られておらず、コンディショナルノックインマウスの使用も含めて、新たな実験計画の検討を予定している。

今後の研究の推進方策

MDS症例において実際に観察される共存変異など細胞の状態を再現することにより、RNAスプライシング分子変異を獲得した細胞が優位性を獲得し、MDS病態に関わっているかを明らかにすることを目指した。現在、代表的な共存変異であるTET2遺伝子の不活化変異と老化造血幹細胞という視点で、骨髄移植実験を行い、経過を観察中であるが、現時点では明らかな優位性の再現は得られていない。また、同様な視点で、高齢マウス由来の造血幹細胞を用いた移植実験も現在、観察をしているが、若年マウスを用いた実験と大きな差異は観察されておらず、今後、serial移植を行い、長期に観察を行う予定である。
現在の実験系で、MDS例において生じる変異獲得細胞のクローナルな増殖が再現できない原因として、幹細胞老化を含めた共存している異常の他に、①遺伝子発現量の違い、②ヒトとマウスの違いが挙げられる。①RNAスプライシングには多くの分子が複合体を構成して機能しており、1分子のみを過剰に発現させることによる非生理的な影響は否定できない。現在、変異遺伝子のノックインマウスの作成が進んでおり、本マウス由来の造血幹細胞を用いた競合移植実験を行い、生理的な発現量での変異体の生物学的な効果を解析する。②MDSで変異が観察されるRNAスプライシング分子は生物種を超えて保存性の高い分子であり、マウスとの相同性も高い。しかし、スプライシングを受ける膨大な数の遺伝子側の認識配列が須らく保存されているかは不明である。そこで、ヒト臍帯血由来のCD34+造血幹細胞への遺伝子導入実験を行い、ヒト造血幹細胞における効果についても検証を行う予定である。

次年度の研究費の使用計画

該当なし

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Smap1 deficiency perturbs receptor trafficking and predisposes mice to myelodysplasia.2013

    • 著者名/発表者名
      Kon S, Minegishi N, Tanabe K, Watanabe T, Funaki T, Wong WF, Sakamoto D, Higuchi Y, Kiyonari H, Asano K, Iwakura Y, Fukumoto M, Osato M, Sanada M, Ogawa S, Nakamura T, Satake M.
    • 雑誌名

      J Clin Invest

      巻: 123 ページ: 1123-1137

    • DOI

      10.1172/JCI63711

    • 査読あり
  • [雑誌論文] EED mutants impair polycomb repressive complex 2 in myelodysplastic syndrome and related neoplasms.2012

    • 著者名/発表者名
      Ueda T, Sanada M, Matsui H, Yamasaki N, Honda ZI, Shih LY, Mori H, Inaba T, Ogawa S, Honda H.
    • 雑誌名

      Leukemia

      巻: 26 ページ: 2557-2560

    • DOI

      10.1038/leu.2012.146.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Novel splicing-factor mutations in juvenile myelomonocytic leukemia.2012

    • 著者名/発表者名
      Takita J, Yoshida K, Sanada M, Nishimura R, Okubo J, Motomura A, Hiwatari M, Oki K, Igarashi T, Hayashi Y, Ogawa S.
    • 雑誌名

      Leukemia

      巻: 26 ページ: 1879-1881

    • DOI

      10.1038/leu.2012.45.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Genome-wide analysis of myelodysplastic syndromes.2012

    • 著者名/発表者名
      Sanada M, Ogawa S
    • 雑誌名

      Curr Pharm Des

      巻: 18 ページ: 3163-3169

    • 査読あり
  • [学会発表] Novel pathway mutations in myelodysplasia revealed by high-throughput sequencing technology.

    • 著者名/発表者名
      真田 昌
    • 学会等名
      第71回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      札幌市
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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