研究課題/領域番号 |
24659462
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宮本 敏浩 九州大学, 大学病院, 講師 (70343324)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 慢性リンパ性白血病 / 造血幹細胞 / 白血化 |
研究概要 |
慢性リンパ球性白血病(CLL)は、成熟CD5+B細胞の末梢血、骨髄、リンパ組織での増殖を特徴とする成熟B細胞性腫瘍であり、高齢者に好発する。我々は、CLL患者の造血幹細胞(HSC)が、正常HSCからは生じ得ない成熟B細胞の異常なクローナルな増殖を免疫不全マウス内で生じることを見出した。従来、成熟リンパ球系腫瘍は、分化した成熟リンパ球において、全ての腫瘍化イベントが生じると考えられてきたが、HSCレベルで長期間に渡り蓄積された異常を背景に多段階的に腫瘍化が生じている可能性が示唆された。そこで、本研究ではHSCレベルで生じる異常を具体的に明らかにするべく研究を行っている。まず、我々はCLL細胞に獲得されている遺伝子変異に着目すべく、次世代シーケンサーを用いて、FACSにより純化したCLL細胞の全エキソンシーケンスを行い、症例毎の遺伝子変異の検出を行う。コントロールとして純化したT細胞を用い、体細胞変異を抽出する。次にFACSにより高度に純化したHSC分画より抽出したgDNAを用いて、症例毎に同定した体細胞遺伝子変異部位をPCRにより増幅し、PCR産物を次世代シーケンサーによりdeep sequenceを行う(amplicon sequence)。従来のシーケンスでは、次世代シーケンサーを用いてもmutant allele frequencyが低い場合は、変異の検出が困難であるが、あらかじめ遺伝子変異が同定されている塩基を数万回シーケンスすることで、低いmutant allele frequencyの変異も存在の有無を推定することが可能になる。本年度、種々の予備実験を行い、次世代シーケンサーによる全エキソンシーケンスおよびamplicon sequenceによるアッセイ系の樹立が完了しており、今後解析症例を増やして行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の段階で、CLL患者HSCが成熟B細胞の異常なクローナルな増殖を免疫不全マウス内で生じることを見出し、世界に先駆けて報告した(Kikushige Y, Miyamoto T, et al. Cancer Cell)。また併せて、上述したように全エキソンシーケンスおよびamplicon sequenceの系の樹立を行っている。アッセイ系の樹立が完了させて、今後は臨床検体を用いた解析に移行する。次世代シーケンサーによるエキソンシーケンス用サンプル調整および増幅反応の条件設定等に加えて、平成24年度には目標とするアッセイ系の樹立をほぼ終了させることができており、おおむね予定通りの研究計画の遂行ができていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で、全エキソンシーケンスおよびamplicon sequenceを行う系が確立したので臨床サンプルを用いた解析を平成25年度に進める。全エキソンシーケンスとamplicon sequenceを組み合わせる事で、微量しか利用できないHSC分画での遺伝子変異の有無を推測可能となると考えられる。これらの研究手法により、HSC分画において獲得されている可能性のある遺伝子変異群の候補を絞り込む。さらに、絞り込んだ遺伝子変異群に対して、直接的に遺伝子変異を有するHSCの存在を証明するために以下の手法によりsingle cellレベルでの解析を行う。まず、一つ目の手法として、CLL症例のHSCをマルチカラーFACSにより、single cell sortingを行い、single cellからのgDNAの増幅を行い、single cellレベルでの変異の有無を検出する。実際に、我々はsingle cell の全エキソンシーケンス系も既に樹立に成功しており、この手法を用いてsingle cellレベルでの遺伝子変異の有無を解析し、正確に変異遺伝子を有するHSCの頻度を明らかにする。2つ目の手法として古典的ではあるが、single HSCをメチルセルロース上にsortingし、一個のHSCあるいは前駆細胞由来の骨髄系コロニーからgDNAを抽出し、変異の有無を検索する。この場合は、gDNAを増幅する必要がないために、増幅によるmutant allele frequencyが変動する可能性が低く、より正確にアッセイが可能になると考えられる。これらの手法を組み合わせてsingle cellでの変異の有無、頻度を評価する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費使用の目的として、基本的に次世代シーケンサー用の試薬、消耗品(具体的にはSureselect/Nextera等のサンプル調整試薬)購入にあてる予定である。また、シーケンスによって得られた膨大なデータを解析するためのコンピューター、解析ソフトウェア(Avadis NGS)等の購入も検討する。
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