研究課題/領域番号 |
24659464
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
杉山 大介 九州大学, 大学病院, 特任准教授 (00426652)
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研究分担者 |
石谷 太 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (40448428)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | グロビン / 赤血球 |
研究概要 |
新規貧血モデルゼブラフィッシュ(Kulkeaw et al., BBRC 2010)の造血組織・腎髄をマイクロアレイ解析し、貧血に関与する候補因子の抽出を行った。次に、real-time PCR法により二次スクリーニングを行い、造血幹細胞が赤血球へ分化する過程において遺伝子発現が50倍亢進するGm16515を同定した。Gm16515はヒストンのアセチル化を司るGCN5 ヒストンアセチル化酵素に類似し、アセチル化に関与する事が示唆された。当該年度は、赤血球系造血におけるGm16515の機能を明らかにするため、Gm16515の in vitro機能解析を行った。 Gm16515をマウス赤白血病細胞へ強制発現した系においては、免疫染色法によりGm16515がヒストンアセチル化を抑制する事が示唆された。また、real-time PCR法によりグロビン遺伝子発現を検討したところ、α、β共に遺伝子発現が抑制された。遺伝子導入2日後の細胞において、細胞表面抗原発現の解析をフローサイトメトリーにより検討したが、コントロールと比較し、顕著な違いは認められなかった。 更に、Gm16515のヒストンアセチル化阻害作用を検討するため、アッセイキットを用いて、アセチル補酵素A結合能及びヒストンアセチル化酵素活性を保持するか検討した。Gm16515はアセチル補酵素A結合能を保持するにも関わらず、ヒストンアセチル化酵素活性を保持しない事から、Gm16515によるヒストンアセチル化阻害作用は既存のヒストンアセチル化酵素に対する競合阻害である事が示唆された。 現在、遺伝子改変マウスを作製中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い、実験は順調に進んでいる。 遺伝子改変マウスを作製するため、ES細胞を胚盤胞へ注射したが、キメラは作製出来たものの、生殖細胞のキメリズムが低く、産仔が得られていない。今年度、再注射する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
<In vivoにおけるGm16515の機能解析> Gm16515の発現阻害実験を、石谷チームがゼブラフィッシュを用いてより詳細に検討する。既にグロビン遺伝子発現の検討が行われており、造血転写因子遺伝子の解析とマイクロアレイ法による網羅的解析を行い、Gm16515の発現を制御する因子の同定を試みる。申請者はGm16515コンディショナルノックアウトマウス作製用のベクター構築済みES細胞を、マウス胚盤胞へ再移植する。Gm16515fl/+マウスのコロニーを拡大し、Mx-1-Creマウスを掛け合わせる。Mx-1-Cre(+);Gm16515fl/+マウスが得られたら、Mx-1-Cre(+);Gm16515fl/flマウスを作製し、pIpCを注射して時期特異的にGm16515遺伝子のノックアウトを行う。本マウスではヒストンアセチル化が促進され、βmajor globin遺伝子の発現が促進し、グロビン合成の不均衡が生じると予測される。よって、サラセミアの病態に類似した無効赤血球造血が生じる可能性が高いため、本マウスの造血細胞アセチル化状態を解析する。また、real-time PCR法による遺伝子発現解析を行い、グロビン合成状態を評価する。更に、造血細胞を用いて、Cytospin標本のMay-Giemsa染色、Flow cytometry法による細胞表面抗原解析、コロニー形成法による造血前駆細胞の解析、放射線照射レシピエントへの移植による造血幹細胞活性の解析、成体末梢血細胞数の解析などにより無効赤血球造血を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
既に必要な機器は整備されており、主として、In vivo解析に関わる消耗品費として使用する。 また必要に応じて、実験推進者の学会発表、人件費などにも使用する。
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