研究課題
骨髄異形成症候群(MDS)は、造血前駆・幹細胞の遺伝子異常や機能異常がその発症の主因と考えられているがその誘因は明らかにされていない。最近、鉄過剰がMDSからの白血病転化の予後不良因子である可能性が示唆されているが、その分子機構は不明である。過去2年の研究で、申請者らは輸血後の鉄過剰状態においては、MDS患者血球においてMDS血球内の活性酸素およびゲノム内の酸化的DNA損傷が亢進することを明らかとした。昨年度は、血球内8-OHdGを高速液体クロマトグラフィー・電気化学検出器(HPLC-ECD法)を用いて定量を行ったところ、MDS全症例の末梢血内8-OHdGレベルは、健常人と比較し、有意に高値であることを明らかとした(2.287 ± 1.540 vs. 0.871 ± 0.877 /105dG, P=0.003 )。IPSSの各予後因子である血球減少、骨髄芽球比率および染色体異常別に8-OHdGを検討した結果、染色体異常の有無が8-OHdGと正の相関があった(正常核型 vs. 異常核型 : 1.538 ± 0.833 vs. 3.036 ± 1.756 /105dG, P=0.019 )。また、末梢血単核球をCD20+、CD3+、CD11b+およびCD34+分画に分けて8-OHdG量を解析した結果、鉄過剰状態では全血球分画において、8-OHdG量が増加し、鉄キレート療法後に8-OHdG量は正常化することが明らかとなった。MDSに対する鉄キレート療法の効果を、鉄キレート群13例および非鉄キレート群47例に分け後方視的に検討した結果、鉄キレート群で2例の死亡例が認められたが(感染症および肝不全)、白血病に移行した症例は認められなかった。一方、非鉄キレート群では、観察期間内の生存率が40%で、約50%に白血病への移行が認められた(Log rank Test, P<0.05)。
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