研究概要 |
骨髄異形成症候群(MDS)は、造血幹細胞(HSC)の異常により発症するクローン性造血器腫瘍である。5q-症候群は5q33領域の欠失を特徴とするMDSの一亜型であり、同領域に存在する複数の遺伝子が責任遺伝子候補とされているが、クローン増幅に関与する遺伝子は依然として不明である。本研究は5q33領域に存在するATOX1という銅シャペロン遺伝子に注目し、HSCの恒常性維持や5q-症候群発症におけるATOX1の役割を明らかにすることを目的として行った。 昨年度は、ATOX1ノックアウトマウスの造血幹細胞(HSC)・造血前駆細胞(HPC)分画と血球分化パターンの解析を中心に研究を遂行し、ATOX1ノックアウトマウス骨髄のHSC分画(CD34-Flt3-KSL, CD150+KSL),HPC分画(CD34+Flt3-KSL, CD34+Flt3+KSL),各種前駆細胞分画の割合は、野生型と比較して有意な差は認められないことを明らかにした。また同様に、骨髄共通骨髄前駆細胞、共通リンパ系前駆細胞分画や末梢血成熟好中球・単球・リンパ球分画にも差がないことも明らかにした。 以上に引き続き、本年度はATOX1ノックアウトマウスのHSC機能について検討を加えた。ATOX1ノックアウトマウス骨髄からFACSを用いてHSC(CD34-Flt3-KSL, CD150+KSL細胞)を精製し競合細胞とともにレシピエントマウスに移植、経時的に末梢血のドナーキメリズムを測定することにで長期骨髄再建能を検討した。また生着した骨髄細胞を継代移植することで、HSCの自己複製能を検討した。この結果、ATOX1ノックアウトマウス由来HSCと野生型HSCでは、長期骨髄再建能・自己複製能に差は見られないことが判明した。 以上から、ATOX1欠失により骨髄・末梢血の各血球分画には異常を来さないこと、ATOX1欠失はHSC機能に影響を与えないことが明らかとなった。
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