研究課題/領域番号 |
24659468
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
西原 祥子 創価大学, 工学部, 教授 (00164575)
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研究分担者 |
不破 尚志 創価大学, 工学部, その他 (50570719)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 血液幹細胞 / ショウジョウバエ / 糖鎖 |
研究概要 |
幹細胞の表面には,各々の発生段階を反映した特異的な糖鎖が発現し,各段階に対応した重要な役割を担っている.しかし,組織幹細胞維持に多様な糖鎖がどのような役割を果たしているかは,ほとんど明らかではない.最近,造血器官の形成や維持に働くシグナル伝達経路が,脊椎動物とショウジョウバエで高度に保存されていることが示された.本研究では,造血幹細胞の維持と分化に重要な役割を果たす糖鎖関連遺伝子の探索と同定を,ショウジョウバエ造血幹細胞とそのニッチで行う.本年度は,造血幹細胞で組織特異的ノックダウンを行い,その維持に機能する糖鎖関連遺伝子の検索を行った. ショウジョウバエには,時空間を制御して目的の蛋白質を発現させることができるGal4/UAS システムがある.ショウジョウバエ幼虫は,造血幹細胞ニッチ・造血幹細胞・成熟血球細胞で構成される造血器官をもつ.造血幹細胞では domeless が発現している.domeless の制御下で Gal4 を産生する系統 (domeless-Gal4)と,UAS 配列の下流に糖鎖関連遺伝子のノックダウンコンストラクトを接続した UAS-RNAi 系統を交配し生まれた次世代では,造血幹細胞特異的に目的の糖鎖関連遺伝子がノックダウンされる.さらに,造血幹細胞で恒常的に β-galactosidase を発現する染色体 (domeless-lacZ) をあらかじめ持たせ,解剖して取り出した組織を,X-Gal 染色や抗 β-galactosidase 抗体で免疫染色して造血幹細胞の増減を確認した.グリコサミノグリカン,N-結合糖鎖を合成する糖転移酵素を個々にノックダウンして検索を行ったところ,造血幹細胞が減少し,造血幹細胞の維持に関与すると考えられるもの,また,造血幹細胞が増加し,造血幹細胞の分化に関与すると考えられるものを複数個見出すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,検索を行う系の確立と造血幹細胞での組織特異的ノックダウンによる検索の実行を目標とした.その結果,造血幹細胞の維持,あるいは,分化に関与すると考えられる,複数個のグリコサミノグリカンとN-結合糖鎖を合成する糖転移酵素を見出すことができた.これにより,検索を行う系が順調に機能していることも確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果を基に,次年度は,以下の研究項目を推進する. (1) 組織特異的ノックダウンによる,造血幹細胞維持に機能する糖鎖関連遺伝子の同定:造血幹細胞ニッチで Gal4 を産生する collier-Gal4 系統を用いて,造血幹細胞ニッチ特異的な糖鎖関連遺伝子のノックダウンを遂行し,造血幹細胞の維持に機能する糖鎖関連遺伝子を同定する. (2) 突然変異体幼虫の解析による,同定した糖鎖転移酵素遺伝子の検認:本年度同定した糖鎖転移酵素遺伝子に関して,その突然変異体を用いた検認を行う.造血幹細胞を恒常的に標識できるdomeless-lacZ 染色体を突然変異体にあらかじめ組み込み,造血器官の β-galactosidase を検出する.突然変異体における β-galactosidase の増減がノックダウン幼虫と同様ならば,その糖鎖転移酵素遺伝子は,造血幹細胞の未分化性維持に責任を持つと確実に証明される. (3) 同定された糖鎖が制御するシグナル伝達経路の検討:同定した糖鎖転移酵素遺伝子から,その糖転移酵素が合成する糖鎖構造が推測できる.また,申請者のこれまでの研究成果や,他のグループの報告からどのような糖鎖構造がどのようなシグナル伝達経路を制御するかが,ある程度明らかになっている.これらの知見を参考に,同定遺伝子の突然変異体における種々のシグナル伝達経路への影響を,下流因子の活性化を指標に検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
B-A=1782円は,消耗品の支払いに端数が出たために生じた.従って,次年度の消耗品の支払い,すなわち,次年度の物品費に合わせて使用する.
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