研究課題/領域番号 |
24659469
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
武谷 浩之 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (60222105)
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研究分担者 |
宮原 浩二 崇城大学, 生物生命学部, 准教授 (40325155)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スフィンゴ脂質 / スフィンゴミエリン / セラミド / スフィンゴシン / スフィンゴシン1リン酸 / 線虫 / 血小板 / スフィンゴミエリン合成酵素 |
研究概要 |
SMS1-/-では、血球のうち血小板のみが減少していた。マウスの解剖で、SMS1-/-においてのみ、脾臓の肥大が観察され、その免疫組織染色の結果、髄外造血の亢進が明らかとなり、特に巨核球が顕著に増加していた。また、骨髄においても巨核球が増加しており(正常の約2.5倍)、血中に幼弱血小板が増加していた。尾切断による出血時間は顕著に延長した。これは血小板減少のみでは説明できなかった。また、血小板数が正常なSMS1+/-も出血症状を示した。したがって、SMS1欠損では、血小板数の減少だけではなく、その機能や膜上での凝固反応活性化能なども欠損していることが示唆された。 脂質代謝は階層的な複数の経路からなっているため、単一酵素の欠失で単純に生成物が減り、基質が増えることは稀であり、例えば、SMSを欠失させた際、基質であるセラミドは増加せず、別経路で加工されて、スフィンゴシンやS1P、あるいは、スフィンゴ糖脂質が増加することも考えられる。したがって、SMS1-/-における血小板減少の分子機序を単一酵素の欠失マウスモデルで明らかにするには限界があった。また、SMS1-/-マウスの出生率が非常に低く、この点も研究の進展を遅らせた。そこで、スフィンゴ脂質代謝の遺伝学的・逆遺伝学的解析を行えるモデル生物として、線虫(C. elegans)に着目した。スフィンゴ脂質代謝系に関してはこれまで、酵母を用いた遺伝学的解析は行われてきたが、酵母ではセラミド(酵母や植物の場合はフィトセラミド)からSMではなくイノシトール含有スフィンゴ脂質が生成されるなど、哺乳類のスフィンゴ脂質組成とは異なる部分も多い(この点、線虫は哺乳類と類似)。本年度は、マウスや培養細胞では解析困難な代謝産物と表現型の関連性について補完するため、線虫を用いたスフィンゴ脂質代謝の遺伝学的・逆遺伝学的解析法の確立にも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SMS1欠損マウスにおける血小板数の減少は、血小板の脾臓での捕捉がその一因と考えられた。また、血小板数の減少だけではなく、血小板機能や膜上での凝固反応活性化能なども欠損していることから、SMS1欠損により、血小板膜の脂質組成と機能の異常により、脾臓での捕捉や凝固反応活性化異常を惹起している機序が示唆された。こうした分子機序の詳細な解析については、上記(「研究実績の概要」の項を参照)の理由でやや遅れている。他方、計画では平成25年度に実施する予定であった線虫を用いたスフィンゴ脂質代謝の遺伝学的・逆遺伝学的研究について、平成24年度に着手できた点は大きな進展であった。今後、スフィンゴ脂質代謝経路の各酵素の欠失した線虫変異体を用いて、以下に示すように(「今後の研究の推進方策 等」を参照)、細胞膜の組成と機能の異常のどの点が連関するかを明らかにし、限られた時間と研究費で解析可能な研究対象の脂質分子と機能を絞り込んだうえで、マウスモデル研究へと回帰していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本計画では、線虫のスフィンゴ脂質代謝経路の各酵素(SMS、スフィンゴミエリナーゼ、セラミダーゼ、セラミド合成酵素、スフィンゴシンキナーゼ、S1Pホスファターゼ、グルコシルまたはガラクトシルトランスフェラーゼ、de novoセラミド合成系の酵素)の変異体を用い、これらを掛け合わせるか、または、siRNAでノックダウンして種々の組合せで2重・3重変異体を作製する。ホスファチジルセリン露呈や寿命(スフィンゴ脂質代謝系はミトコンドリア機能やインスリン・シグナル伝達系と関連するため老化に影響すると予想される)を指標に逆遺伝学的解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の内定研究費は、本研究課題の科研への応募時の計画研究費から大幅に削られたものであり、未使用研究費は不足すると思われるプラスチック器具などの消耗品の経費に充てる。
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