研究課題/領域番号 |
24659469
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
武谷 浩之 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (60222105)
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研究分担者 |
宮原 浩二 崇城大学, 生物生命学部, 准教授 (40325155)
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キーワード | スフィンゴ脂質セラミド / スフィンゴミエリン / セラミド / スフィンゴシン / スフィンゴシン1リン酸 / 線虫 / 血小板 / スフィンゴミエリン合成酵素 |
研究概要 |
スフィンゴミエリンやセラミド、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)などのスフィンゴ脂質は細胞膜の構成成分であり、また シグナル分子として機能する。スフィンゴミエリン(SM)合成酵素(SM synthase:SMS) のノックアウトマウスでは、血小板減少などの表現型を示す。この表現型の発現には、SM合成阻害によるSM減少だけではなく、セラミドの増加やその加工によるS1Pの増加などが複雑に作用するため、その分子機序の解明には、複数の代謝酵素を同時に欠損させる必要がある。本年度は、哺乳類と同様のスフィンゴ脂質代謝系を有する線虫(C. elegans)を用いて、同代謝系とその制御機構の遺伝学・逆遺伝学的な解析モデルの確立を目指した。線虫のスフィンゴミエリン合成酵素遺伝子(sms-1およびsms-3)の解析、特にsms-1変異体の詳細な解析とともに、セラミド合成酵素(hyl-1およびhyl-2)、酸性スフィンゴミエリナーゼ(asm-3)、S1Pリアーゼ(tag-38)の各遺伝子の欠失変異体について検討し、また、hyl-1とhyl-2の二重変異体(hyl-1;hyl-2)を作製して解析した。その結果、sms-1およびhyl-1;hyl-2の成長の遅延、asm-3の寿命の延長が明らかとなった。sms-1では産卵数が減少していたが、掛け合わせや卵巣、交尾器、性行動の検討から、精子形成や受精の異常に基づく表現型と示唆された。産卵数は、hyl-1およびhyl-2変異体においても減少していたが、asm-3およびtag-38変異体では増加していた。以上から、スフィンゴ脂質代謝系は線虫の成長や寿命、受精等に異常を示す事が示され、現在、その分子機序についての詳細な解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
哺乳類と同様のスフィンゴ脂質代謝系を有する線虫を用いて、KOマウスでは不可能であった同代謝系とその制御機構の遺伝学・逆遺伝学的な解析モデルを確立しつつあり、平成25年度の研究計画におおむね則している。
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今後の研究の推進方策 |
線虫のスフィンゴ脂質代謝経路の各酵素のなかで、これまでに解析が行われていないセラミダーゼ、スフィンゴシンキナーゼ、S1Pホスファターゼ、グルコシルまたはガラクトシルトランスフェラーゼの変異体を用い、これらを掛け合わせるか、または、siRNAでノックダウンして種々の組合せで2重・3重変異体を作製する。これらの変異体線虫の表現型の解析を通して、血小板機能につながる遺伝子を絞り込む。この際、ホスファチジルセリン露呈や寿命(スフィンゴ脂質代謝系はミトコンドリア機能やインスリン・シグナル伝達系と関連するため老化に影響すると予想される)などが指標になると考えられる。絞り込んだ遺伝子のsiRNAを用いて哺乳類培養細胞の相同遺伝子をノックダウンし、ホスファチジルセリン露呈やインスリンシグナル伝達系への影響を明らかにし、動物種を超えた普遍性の有無を明らかにする。平成26年度は最終年度にあたるので、研究を総括する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ほぼ計画的に使用したが、年度末に残余があった。 プラスチック器具の購入に充てる。
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