研究課題/領域番号 |
24659474
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
福井 裕行 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (90112052)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | IL-33 / 抗アレルギー天然物 / 疾患感受性遺伝子 |
研究概要 |
ヒト花粉症患者において、くしゃみ、鼻汁、鼻粘膜腫脹などの症状は、ヒスタミンH1受容体(H1R)、ヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)、IL-5の各mRNAレベルと相関性を示した。しかし、鼻粘膜IL-33 mRNAレベルは、上記の遺伝子のmRNAレベルとの相関性は認められず、また、花粉症症状との相関性も認められなかった。IL-33はヒスタミンシグナルとは異なる慢性アレルギー炎症に関与することが考えられる。そこで先ず、IL-33 mRNAレベルが上昇する条件の検索を行った。HeLa、HMC-1、RBL-2H3、Swiss 3T3の各培養細胞において、IL-33 mRNAレベルが変動する条件検索を行ったところ、Swiss 3T3細胞をPMAで刺激を行った時に、IL-33 mRNAレベルの顕著な上昇を見いだした。一方、IL-33受容体は、IL-33R(ST2L)とIL-1R accessary protein (IL-1RAcp)の複合体として存在する。ST2L mRNAレベルの上昇による受容体アップレギュレーションによっても、IL-33シグナルの増加が予想される。そこで、RBL 2H3細胞にを用いて、ST2L mRNAレベルが上昇する条件の検索を行ったが、良い結果は得られなかった。 そこで、Swiss 3T3細胞のPMA刺激によるIL-33 mRNAレベルの上昇に対して抑制作用を持つ天然物の検索を行った。その結果、和漢薬の苦参に強い抑制作用があることを見いだした。また、PMA刺激によるIL-33 mRNAレベルの上昇は、Ro31-8220により抑制されるのは当然と考えられるが、Go 6976、及び、rottlerinによる抑制は弱いことから、PKCα/β、及び、PKCδ以外のサブタイプの関与が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アレルギー疾患において、IL-33の病理的意義の解明が強く期待されている。そこで、IL-33の産生に関わるIL-33遺伝子発現の調節機構解明は非常に重要であり、そのために、その機構に作用する薬物の同定、及び、薬理機構解明は必須である。しかし、IL-33遺伝子発現亢進の実験系は、確実なものがない。そこで、本研究課題において、IL-33産生が報告されている種々の培養細胞を用いて、種々の刺激条件による検討により、IL-33遺伝子発現亢進が確実に起きる実験系の確立を試みた。その結果、Swiss 3T3細胞に対するPMAで刺激を行うことにより、IL-33 mRNAレベルの顕著な上昇を見いだした。この成果は、本研究課題の遂行において、非常に満足できる結果であると考えている。また、IL-33遺伝子発現亢進に対する抑制作用を持つ天然物の同定にも成功しており、次年度は天然物由来IL-33遺伝子発現抑制物質の同定を目指す。
|
今後の研究の推進方策 |
PMAで刺激を行うことにより、IL-33 mRNAレベルが顕著に上昇するSwiss 3T3細胞を用いる実験系は、IL-33遺伝子発現抑制作用を持つ抗アレルギー天然物の検索には必須である。現在、抗アレルギー和漢薬の苦参にIL-33遺伝子発現を見いだしている。そこで、苦参以外のIL-33遺伝子発現抑制作用を持つ抗アレルギー天然物の検索を行う。並行して、Swiss 3T3細胞におけるIL-33 mRNAレベル上昇に対する抑制活性を指標にして、苦参由来IL-33遺伝子発現抑制物質の精製、単離、化学構造決定、抑制物質の有機合成、及び、抑制物質の薬理機構解明を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
IL-33遺伝子発現抑制作用を持つ抗アレルギー天然物の検索のために、天然物からのエキス作成、PMA刺激を行ったSwiss 3T3細胞におけるIL-33 mRNAレベル上昇に対するエキスの抑制作用を調べる。この研究において、IL-33 mRNAの測定にかなりの研究費が必要となる。一方、Swiss 3T3細胞におけるIL-33 mRNAレベル上昇に対する抑制活性を指標にして、苦参由来IL-33遺伝子発現抑制物質の精製・単離を行う。この研究においても、IL-33 mRNAの測定は費用が高く、しかも、頻繁に測定を行うことから、かなりの研究費を必要とする。そこで、次年度への繰越額はIL-33 mRNA測定用試薬の購入に使用する予定である。更に液体クロマトグラフィーにより、苦参エキスのIL-33遺伝子発現物質を含む分画を作成する研究ステップにおいても、ある程度の研究費用が必要である。そして更に、苦参由来IL-33遺伝子発現物質の有機合成にもかなりの研究費用が必要となる。また、IL-33遺伝子発現亢進に対する薬理作用機構については、本研究課題において初めて確立できる実験系であり、IL-33遺伝子発現物質の有機合成品が実際にSwiss 3T3細胞におけるIL-33 mRNAレベル上昇を抑制できるかどうかを明らかにする研究まで、遂行できる可能性がある。この研究にもかなりの研究費を必要とする。
|