研究課題/領域番号 |
24659476
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
剣持 直哉 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 教授 (00133124)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | RNA修飾 / 自己免疫疾患 / リボソーム / 人工抗体 |
研究概要 |
RNA修飾とSLEとの関連を明らかにするために、本年度はRNA修飾を認識する人工抗体の作製とRNA修飾に異常のあるゼブラフィッシュの作製を行った。 1.RNA修飾を認識する人工抗体の作製 ファージディスプレイ型の人工抗体ライブラリーを用い、RNA修飾を特異的に認識する抗体(抗RNA抗体)の作製を試みた。非修飾型RNAに結合する抗体の単離にはすでに成功していたことから、この系を用いて修飾型RNAに特異的に結合するファージ抗体の単離を目指した。まず、非修飾または修飾ヌクレオチドを取込ませたU1 RNAを作製し、これを抗原としてファージディスプレイ型人工抗体ライブラリーのスクリーニングを行った。次に、同定したクローンの特異性をELISA法で検討した。しかし、ELISAの解析において非特異的なシグナルが検出されたため、コントロール抗原と抗体を用いてアッセイ系の検討を行った。 2.RNA修飾欠損モデル動物の作製 免疫の活性化とRNA修飾との関わりを個体レベルで調べるために、ゼブラフィッシュを用いて修飾酵素のフィブリラリン(メチル化)とディスケリン(ウリジンの異性化)の遺伝子をノックダウンした。ノックダウンは、 これらタンパク質のmRNAに結合するモルフォリノアンチセンスオリゴ(MO)を、受精卵に注入することで行った。 また同様に、snoRNA(修飾部位を特定するガイドRNA)に対するMOの注入により、snoRNAの発現を抑制し部位特異的に修飾を阻害すことにも成功した。RNA修飾の低下は、質量分析計を用いて定量した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、RNA修飾を認識する人工抗体の作製およびRNA修飾欠損モデル動物の作製に取り組んだ。抗体の作製に関しては、今後特異性の確認が必要であるものの概ね順調に進んでいる。欠損モデル動物の作製に関しては問題なく進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1.RNA修飾を認識する人工抗体の作製 昨年度に引き続き、非修飾または修飾RNAを識別できる抗体の取得を試みる。SLE患者の自己抗体のエピトープ 内にあるRNA修飾を標的として、ファージディスプレイ型人工抗体ライブラリーから抗体を単離する。その際、 ディファレンシャルスクリーニングにより、修飾を持つRNAだけに結合する抗体の取得を目指す。RNA修飾に特異的な抗体が得られた場合、生体試料中のRNA修飾を同定する方法を検討し、SLE患者のRNA修飾の動態を解析する手法を確立する。 2.RNA修飾欠損ゼブラフィッシュモデルの解析 昨年度に作製したゼブラフィッシュモデルを用いて、(1)自然免疫の活性化による サイトカインの放出を調べるために、ノックダウン胚と正常胚からタンパク質を抽出して、ELISA法でIL12、TNF α、INFαを定量する。(2)マクロファージの活性化が誘導されているかどうかをマーカー(L-plastin、mpx)のホールマウントin situハイブリダイゼーションにより検出する。(3)ゼブラフィッシュですでに同定されている Toll様受容体17個の遺伝子の発現をRT-PCRで解析し、非修飾RNAによる免疫活性化の経路を調べる。さらに、(4)ノックダウン胚と正常胚からRNAを抽出し、このRNAをゼブラフィッシュのDNAチップ(Affymetrix社)および次世代シーケンサーにて解析し、発現に変動が見られた遺伝子群を同定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費については、すでに実験を開始していたことから初期費用が抑制され、当初所要額との間に差額が発生した。また、謝金については、予定していたライブラリーのスクリーニングを学生と行ったため経費が抑制された。 物品費は、一般的な試薬・器具類の他、アレイ解析のためのDNAチップや合成RNAなどの消耗品を購入する。旅費は、RNA学会(松山)および分子生物学会(神戸)に参加するために使用する。謝金は、ゼブラフィッシュの飼育・管理のための実験補助員の雇用に使用する。その他の経費は、論文発表するための投稿料、学会の参加費等に使用する。
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