研究課題/領域番号 |
24659477
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石井 恵子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00291253)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | クリプトコックス・ガッティ / 高病原性 / オバルブミン / T細胞サブセット / 免疫応答性 |
研究概要 |
1999年にカナダのバンクーバーでアウトブレイクを起こしたCryptococcus gattiiは免疫正常者においても中枢神経系へ播種性感染を起こし、クリプトコッコーマと呼ばれる腫瘤病変を起こすことが明らかになっている。クリプトコックス感染症の病態形成において、ヘルパーT(Th)細胞サブセットのバランスが重要であることから、異なるクリプトコックス株によるTh細胞サブセットの分化の違いを明らかにすることを目的とした。ある異種抗原に反応して活性化・増殖するT細胞の割合は極めて小さいので、Th細胞サブセットの動態を明確に解析することが難しい。そこで、ニワトリ卵白アルブミンであるovalbumin (OVA)を発現するクリプトコックスを作製した後、OVAを認識するT細胞受容体トランスジェニックマウスに感染させ、解析を行う。 平成24年度は、高病原性のC. gattiiバンクーバーアウトブレイク株(R265: 遺伝子型VGIIa)、もともとオーストラリア、東南アジアなどの限られた地域で呼吸器・中枢神経感染症を起こすC. gattii株の中国分離株(CH8: 遺伝子型 VGI)、さらに世界的に分布するC. neofomansのうちこれまで保有していなかった株(H99: 血清型 A)を入手した。これらの株の生菌はマウス骨髄由来樹状細胞を活性化したが、死菌は活性化しないことから、樹状細胞の活性化は病原体関連分子パターン(PAMPs)のみで起こっているのではないことが明らかになった。一方、クリプトコックスでOVAを発現させるためのクリプトコックスphospholypase B(PLB)プロモーター含有ベクター、OVA遺伝子、クリプトコックス選択薬剤nouseothricin(NAT)を入手し、PLBプロモーター下にOVA遺伝子を挿入したプラスミドを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度中に本研究に必要なC. gattiiの代表的な遺伝子型を持つ株およびC. neoformansの未所持株、さらにOVA発現プラスミドを作製し、クリプトコックスに導入するために必要なプラスミドやクリプトコックス選択薬剤を入手した。クリプトコックス株の入手時期が遅かったので、in vivo 感染実験はH25年度に行うこととし、H25年度に予定していたOVA発現プラスミドの構築をH24年度中に行った。
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今後の研究の推進方策 |
クリプトコックス各株の収集とOVA発現プラスミドの構築が完了しているので、これらを用いてOVA発現クリプトコックス各株を樹立する。クリプトコックス各株およびOVA発現クリプトコックス各株をOVA特異的受容体トランスジェニックマウスに感染させ、自然免疫応答性および獲得免疫応答性について解析する。特に後者ではTh細胞サブセットへの分化や細胞傷害性T(Tc)細胞の活性化を中心に、感染後の肺やリンパ節における各種免疫細胞の推移やサイトカイン・ケモカインの産生などの質的変化を経時的に解析する。 得られた結果をもとに、感染モデルマウスにおけるC. gattiiの病原性を評価し、C. neoformansと比較する。また、熱帯・亜熱帯地域で以前から発生していたVGIタイプのC. gattiiと1999年以来北米太平洋沿岸地域でアウトブレイクを起こしているVGIIaのクリプトコッコーマの形成や免疫応答性に特に注目して比較し、高病原性と免疫応答性との関連についての詳細な検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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