研究課題/領域番号 |
24659478
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
八田 益充 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80528258)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 抗菌薬 / 短時間殺菌能 / 精密粒度分布測定 |
研究概要 |
精密粒度分布測定を用いた抗菌薬の短時間殺菌能の評価対象として、まずは院内感染の原因菌の1つとして重要視されているメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant staphylococcus aureus; 以下MRSAと略)を用いた。また、短時間殺菌能の評価をより明確化するために、短時間に作用を発揮することが確認されている現在開発中の抗菌薬WAP-8294A2(以下WAP)、および現在市販されている各種抗MRSA薬であるバンコマイシン(VCM)、テイコプラニン(TEIC)、リネゾリド(LZD)、アルベカシン(ABK)を用いた。 まずは、東北大学病院のMRSA臨床分離株約100株を用いて、WAPおよび各種抗MRSA薬の最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration;以下MIC)を測定した。その結果、WAP、VCM、TEIC、LZD、ABKそれぞれの平均MIC値は、0.5μg/ml、2μg/ml、2μg/ml、2μg/ml、1μg/mlと算出された。次に、WAPおよびVCMを用いて、各々のMIC値の濃度で、作用後5分~120分までの各タイムポイントにおいて、精密粒度分布測定による菌径の変化およびTime-killing assay法を用いた生菌数カウントを行った。精密粒度分布測定では、WAPでは作用後5分の時点から菌径の減少が認められたのに対し、VCMでは作用後120分の時点で有意な菌径の変化は認められなかった。一方で、生菌数カウントでは、菌径変化に一致して、WAPでは5分の時点で菌量が1/1000~1/10万へ減少したのに対し、VCMでは120分の時点で有意な生菌数の減少が見られなかった。これらはWAPやVCMの作用発現の特徴と合致しており、精密粒度分布測定での菌径変化が殺菌能評価として有用であることを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MRSAを用いた検討により、精密粒度分布測定の結果とTime-killing assayによる実際の生菌数カウント結果は一致していたことは確認された。しかし、当初目標としていた電子顕微鏡による菌形態の実際の変化を捉える段階までには至らなかった。その理由としては、現在当施設で利用できる電子顕微鏡は検体を乾燥させる必要があり、乾燥の操作そのものが菌の形態を変えてしまい、抗菌薬の影響なのか乾燥工程の変化なのか判別がつかないためであった。これについては、乾燥工程を要しない電子顕微鏡撮影を利用して検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まずは電子顕微鏡による菌形態の変化の確認をまず行う予定である。電子顕微鏡以外にもアラマーブルー染色による生菌数の評価なども組み合わせて、精密粒度分布測定の結果を多面的に検証する方針である。 また、MRSA以外にも多剤耐性緑膿菌やカンジダなどの病原体についても既存抗菌薬を中心に短時間殺菌能を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の主な使用内容としては、①菌の培養などに用いる試薬・消耗品、②精密粒度分布測定に用いる試薬・消耗品、③精密粒度分布測定用の機器(Multisizer3)のメンテナンスを予定している。また、研究進行具合に応じて、国内外の学会での成果発表に関連した交通費や論文化に必要な諸費用などにも用いる予定である。 また次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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