研究課題/領域番号 |
24659478
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
八田 益充 東北大学, 大学病院, 講師 (80528258)
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キーワード | 抗菌薬 / 短時間殺菌能 / 精密粒度分布測定 |
研究概要 |
前年度は、精密粒度分布測定を用いた抗菌薬の短時間殺菌能の評価対象としてメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant staphylococcus aureus;以下MRSAと略)の臨床分離株を用いて、新規開発中の薬剤WAP-8294A2(以下WAP)を含めて複数の抗MRSA薬作用後の精密粒度分布測定による菌径変化と生菌数カウントの評価を行った。その結果、従来の抗MRSA薬と比べてWAPでは、抗菌薬作用後短時間で菌径の変化が認められ、また実際の生菌数の減少に有意な相関を認めた。 今年度は、まず、WAPに認められた作用後短時間での抗菌活性が溶液の蛋白濃度の影響を受けていなかったかを確認した。その結果、溶液にウシ胎児血清を加えた群では、加えなかった場合と比べて、MRSAの最小発育阻止濃度が有意に低下し、抗菌活性が増すことが判明した。一方で、精密粒度分布測定においては、血清添加群も非添加群も作用後5分の時点で菌径の変化を認め、有意な差は認めなかった。おそらく新規開発中の抗菌薬の短時間殺菌性のため、作用後5分では有意な差を捉えることができなかったものと考えられたが、血清を添加することでWAPの抗菌活性が増すことは他の抗MRSA薬では認められない新しい知見であった。 次に、粒度分布測定で認められた菌径の変化が、実際に電子顕微鏡での形態変化と一致するかどうかを検証した。しかし、電子顕微鏡の検体準備過程における乾燥操作そのものが菌の形態を変えてしまう可能性があることが判明した。これについては、補助事業期間延長し、別の方法で形態変化を検証できないか検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初目標としていた電子顕微鏡による菌形態の実際の変化を捉えるには至らなかった。現在当施設で利用できる電子顕微鏡は検体を乾燥させる必要があり、乾燥の操作そのものが菌の形態を変えてしまうためである。これについては、従来の電子顕微鏡以外の方法で形態変化を捉える方法を引き続き検討している。また、細菌よりも乾燥による菌の形態変化の影響が少ないと予想される大型の酵母様真菌であるカンジダを用いて、短時間殺菌能の評価において、粒度分布測定による菌径の変化と電子顕微鏡による菌形態の変化を検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、従来の電子顕微鏡以外の方法で菌形態の変化を捉えることができないか、アラマーブル―染色による評価なども含めて多角的に検討する予定である。また、MRSA以外にも、大型の酵母様真菌であるカンジダを用いて、抗真菌薬の短時間殺菌能を評価する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は主に電子顕微鏡の費用を大きく見込んでいたが、電子顕微鏡の検体準備段階での乾燥過程が菌形態に影響を及ぼすことが判明し、電子顕微鏡の使用を途中から見合わせていた。次年度使用額が生じたのは、今年度使用予定であった電子顕微鏡の使用回数が大きく減ったためである。 次年度の研究費の主な使用内容としては、1.菌の培養などに用いる試薬・消耗品、2.精密粒度分布測定に用いる試薬・消耗品、3.精密粒度分布測定用の機器のメンテナンス、を予定している。また、研究進行具合に応じて、国内外の学会での成果発表に関連した交通費や論文化に必要な諸経費などにも用いる予定である。
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