研究課題
挑戦的萌芽研究
人病原真菌アスペルギルス・フミガータス・ゲノム株を用い、糖鎖結合領域をもつと予測されるタンパクをコードする遺伝子の欠損株を6遺伝子についてそれぞれ作製した。これからの株をマウスに感染させ、病原性を観察したところ、特に病原性の亢進した(マウスの死亡率が上がった)1つの株(⊿3)が注目された。⊿3感染で死亡したマウスでは、野生型株に較べ、特に肝臓における菌の繁殖が顕著であり、腎臓等への侵襲は少なめであった。また、感染マウスの肝臓の遺伝子発現をrtPCRで調べると、自然免疫に関与する遺伝子の中でもTLR4やDectin1の発現が、野生株感染に較べ有意に抑制されていた。菌株を培養して試験管中で性質の違いを調べると、Calcofluor whiteやCongo red などキチン(糖鎖)などに結合するとされる色素に対する感受性が、⊿3株で野生株よりも増加していた。一方、温度感受性、pH感受性、栄養素感受性、浸透圧感受性、抗真菌剤感受性、酸化ストレス・ERストレス感受性には、大きな違いが見られず、またSEMとTEMによる電子顕微鏡観察でも顕著な違いが見つからなかった。現在、HPLC等を用い代謝産物の違いについて確認を進めている。一方、GFPを結合して蛍光観察すると、このタンパクは、主に細胞内小胞体-Golgi系に局在していることがわかった。また、RNA-seq法を用いて、菌の全遺伝子の発現解析を行うと、野生株に比較して⊿3株では、細胞外タンパクの発現が大きく増減していることが明らかとなった。現時点では、⊿3では、小胞体-Golgi系の蛋白の輸送が阻害され、細胞外タンパクの発現が変化した結果、宿主の自然免疫系の菌の認識力が低下して、逆に菌の病原性が上昇したとの仮説をたて、菌表層の問題のタンパク(分子)の探求を進めている。
2: おおむね順調に進展している
概ね、当初の予定どうり進んできたが、本研究で最終的な役割を果たす、細胞内小胞体からゴルジに輸送される(しかもマンノース等の糖鎖をつけているらしい)タンパクを探索するのには、今後、時間と手間がかかる可能性がある。適切な進度の時点で1度論文にまとめておきたい。
プロテオームなどの方法を用いて今回の研究のキーとなる菌表面に発現しない事で、宿主自然免疫系の認識を逃れ、結果としてアスペルギルス・フミガータス菌の病原性を更新している分子を探索する。同分子のノックアウトするなどして、その機能、宿主応答における役割を確認する。
該当なし
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Journal of Nutritional Biochemistry
巻: in press ページ: in press
doi:10.1016/j.jnutbio.2012.10.006
http://www.pf.chiba-u.ac.jp/