研究課題/領域番号 |
24659479
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
五ノ井 透 千葉大学, 真菌医学研究センター, 教授 (30134365)
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キーワード | アスペルギルス症 / アスぺルギルス・フミガタス / 真菌症 / 遺伝子破壊 / 動物感染実験 / 自然免疫 / マウス / ER-ゴルジ・システム |
研究概要 |
ヒト病原真菌アスペルギルスフミガタスは、世界中のあらゆる地域において土中や塵芥などから空気中に胞子を撒き散らしヒトの呼吸器系等に感染する。近年、エイズ、癌、糖尿病など免疫力を低下させる疾患や高齢者の増加など様々な要因でアスペルギルス症が増加している。アスペルギルス症のヒト感染機構や感染に関与する新たな因子をさぐる目的で研究を開始し、糖鎖認識ドメインを持つアスペルギルスの機能未知遺伝子Af2g12180の破壊によって、菌の病原性が著しく上昇することを見つけた。 免疫を抑制したマウスの尾静脈から野性型アスペルギルス菌株とAf2g12180の破壊株をそれぞれ接種したところ、破壊株は肝臓で菌糸を伸ばし、顕著な病巣を形成したのに対し、野性型にはこのような顕著な病巣は見られなかった。また、腎臓、脾臓においても野性株と破壊株の間に、異なる病態が観察された。 破壊株が肝臓で菌糸を伸ばし顕著な病態を示す原因を探るために、マウス肝臓で自然免疫に関与する受容体遺伝子の発現量を較べた。この結果、Af2g12180破壊株では、野生株に較べTLR4、TLR5、Dectin1、CARD9、CCL5、CCL19など自然免疫に関与する遺伝子の発現が抑制されていることが明らかとなった。 またAf2g12180遺伝子がコードするタンパクの機能を探るために、まず末端をGFPで修飾した融合タンパクを作成し、本タンパクが菌糸体においても細胞内ゴルジ-ERシステムに留まることを見いだした。 これらの結果は、Af2g12180遺伝子の破壊株では、菌体表面に運ばれ菌表層で宿主の自然免疫による攻撃の標的となる何らかの分子が、菌表面に露出せず、宿主の自然免疫による攻撃を回避して、病原性の発現増大を引き起こしている可能性を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的であるアスペルギルス・フミガタスの新規の病原因子の探索を、分子生物学的手法、動物感染実験、病理形態学的観察などを組み合わせて進展させることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本センターに導入された小動物X線CT、菌のプロテオーム解析、菌の全遺伝子発現解析などの手法を取り入れ、研究を進める予定である。特に、ER-ゴルジ・システムを通って菌の表面に露出し、宿主自然免疫の標的となる分子は、同定出来ておらず、この分子、あるいはキーとなる菌細胞表層の変化の解析・同定を進める。
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