研究課題
ヒト病原真菌アスペルギルス・フミガタスは、世界中のあらゆる地域において土中や塵芥などから空気中に胞子を撒き散らし、ヒトの呼吸器系等に感染する。近年、エイズ、癌、糖尿病など免疫力を低下させる疾患や高齢者の増加など様々な要因でアスペルギルス症が増加している。アスペルギルス症のヒト感染機構や感染に関与する新たな因子をさぐる目的で糖鎖認識ドメインを持つアスペルギルスの機能未知遺伝子を複数破壊して、アスペルギルス症発症への影響をマウス感染モデルを用いて検討した。遺伝子破壊株の中でも、Af2g12180破壊株で、菌の病原性が著しく上昇することを見つけた。免疫を抑制したマウスの尾静脈から野性型とAf2g12180の破壊株をそれぞれ接種したところ、破壊株は肝臓で菌糸を伸ばし顕著な病巣を形成したのに対し、野性型にはこのような顕著な病巣は見られなかった。また、腎臓、脾臓においても野性株と破壊株の間に、異なる病態が観察された。また、マウス肝臓で免疫に関与する受容体遺伝子の発現量を較べたところ、破壊株では、TLR4、TLR5、Dectin1、CARD9、CCL5、CCL19等の自然免疫関連因子の発現が抑制されていることが明らかとなった。病原性の増悪機構に関しては現在研究を重ね検討中である。また、同様にAf5g14740もフコース特異的レクチンをコードする菌の遺伝子と言われているが、この遺伝子の破壊でも野性型に較べて病原性の更新が起こった。さらに病原性の更新機構について解析を進め、宿主と相互作用するタンパクの部分構造を明らかにした。
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