研究課題/領域番号 |
24659480
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 昌彦 浜松医科大学, 医学部, 助教 (50385423)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | C型肝炎ウイルス / 生活環 / 感染・複製 / 粒子形成 / 宿主遺伝子 |
研究概要 |
国内のおけるC 型肝炎ウイルス(HCV)感染者は約200 万人とされ、その多くが慢性肝炎から肝硬変、肝細胞癌へと移行する。これまでHCV の感染、複製、粒子形成に関わる宿主遺伝子は数多く報告されているが、いまだその全容は明らかになっていない。そこで、本研究では、新規遺伝子発現抑制法shRNAmirを用いて35,000の宿主遺伝子の発現がひとつずつ抑制された肝細胞癌由来細胞株Huh7.5.1にマーカー遺伝子(TK, Gluc)を発現するHCVを感染させることにより、HCVの生活環に必須な遺伝子を網羅的にスクリーニングする。同定した遺伝子の機能解析を行い、最終的にはHCV治療薬のターゲットになりうるか検討する。 本年度は、(1)HCV感染・複製に関連する遺伝子、(2)HCV粒子形成に関連する遺伝子の網羅的同定を行うために、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)と分泌型ルシフェラーゼ(Gluc)を発現するHCVサブゲノムレプリコンRNAを発現するベクターを構築した。構築したベクターにzeocin耐性遺伝子を挿入し(pHH SGR-TK/JFH1/Zeo, pHH SGR-Gluc/JFH1/Zeo)、Huh7.5.1に遺伝子導入・薬剤選抜することで、安定発現細胞株を樹立した。樹立した細胞株でTKが高発現していることを免疫染色法、Glucが高発現していることをルシフェラーゼアッセイ、HCV RNAが発現していることをリアルタイムPCR法により確認した。これらのマーカー遺伝子を含む一過性感染HCVウイルス(HCVtcp)を産生するために、エピソーマルに複製可能なプラスミドにHCV構造遺伝子Core-NS2領域を挿入したベクターを構築し(pEB-neo/c-ns2)、上述の安定発現細胞株に遺伝子導入することで、網羅的スクリーニングに必要となるHCVtcpを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、(1)HCV感染・複製に関連する遺伝子の網羅的同定および(2)HCV粒子形成に関連する遺伝子の網羅的同定に必要なコンストラクトおよび細胞株の樹立を行った。本年度の当初の達成目標は、これら樹立したHCVサブゲノムレプリコンRNA安定発現細胞株に35,000種類のヒト遺伝子を抑制することのできるshRNAmir発現組換え体レンチウイルスを感染させて、レンチベクターのマーカーであるピューロマイシンにより選抜し、宿主遺伝子発現がノックダウンされた細胞株を得るところまでであった。コンストラクションなどや薬剤選抜によるHCVサブゲノムレプリコンRNA安定発現細胞株の樹立に予想より時間がかかったが、安定的に高発現する細胞株を樹立することができた。現在、来年度の到達目標も含め、引き続き研究を推進しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、Huh7.5.1およびHuh7.5.1/pHH SGR-Gluc/Zeo, pEB/c-ns2にshRNAmir発現組換え体レンチウイルスを感染、選抜することで安定的に遺伝子発現が抑制された細胞株を樹立する。(1)HCV感染・複製に関連する遺伝子の同定するために、Huh7.5.1/shRNAmirにHCVtcp(TK)を感染させ、ガンシクロビルに感受性となったHCV感染複製細胞を死滅させ、淘汰されたノックダウンによりHCV感染・複製能が欠損した細胞株に含まれるshRNAmir配列を決定し、感染・複製に必須な宿主遺伝子を明らかにする。 (2)HCV粒子形成に関連する遺伝子の同定するために、Huh7.5.1/pHH SGR-Gluc/Zeo, pEB/c-ns2, shRNAmirの培養上清に含まれるHCVtcp(Gluc)をナイーヴなHuh7.5.1に感染させ、ルシフェラーゼアッセイを行う。感染能が欠損した細胞株に含まれるshRNAmir配列を同定し、粒子形成に必須な宿主遺伝子を明らかにする。 上記より得られた遺伝子がHCVの生活環に必須であるかを明らかにするために遺伝子抑制実験を行う。複製関連遺伝子については、レプリコンを持続的に複製するHuh7.5.1にsiRNAを導入し、リアルタイムPCR法によるHCV RNAコピー数、イムノブロットによるHCVタンパクの発現を調べる。感染、粒子形成関連遺伝子については、shRNAを導入した細胞にHCVcc感染もしくはHCV RNAを遺伝子導入し、培養上清に含まれる感染性粒子、HCV Core量を指標に関与を明らかにする。得られた候補遺伝子については、細胞内機能、局在、過剰発現によるHCV感染・複製・粒子形成へ影響、結合分子の同定を行い、作用機序を明らかにする。最終的には、阻害剤によるHCV増殖・粒子形成および感染阻害を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞の培養には、培養用試薬(培地、血清、抗生物質、選抜薬剤など)、HCVtcpの濃縮精製にはカラムなどが必要となる。また、スクリーニングには、ガンシクロビルやルシフェラーゼアッセイキットなどを用いる。候補遺伝子の機能解析のために、siRNA、リアルタイムPCR用の試薬(逆転写酵素、PCR酵素、Taqmanプローブ、プライマーなど)、発現ベクター構築のための一般的な分子生物学試薬、抗体、阻害剤などを購入する。また、消耗品に関しては、感染性ウイルスを扱う実験を行うために培養容器やピペット類はすべてディスポーザブルのプラスチック容器の購入することになる。成果の発表をするために、国内、国外での学会(肝臓学会、ウイルス学会、International meeting on hepatitis C virus and related viruses)で行うための旅費、論文投稿に関わる費用を予定している。
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