平成25年度はこれまでに得られた知見を投稿論文として発表するための準備に充てた。 ヒトへの致死率が50%を超える高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)の病原性を解明するために、ヒト呼吸器上皮細胞を用いてH5N1ウイルスの感染動態をリアルタイムで解析する新しいバイオイメージングシステムを構築することを研究の目的とした。インフルエンザウイルスを脂質染色性の色素 (DiI、octadecyl rhodamine B chloride等) で染色し、ウイルスが細胞表面に吸着後、内部に移行していく様子を共焦点レーザー顕微鏡で観察するシステムを確立し、種々の鳥インフルエンザウイルスにおける感染動態について比較検討した。 その結果、(従来のH5亜型ウイルスとして)2000年以前に分離された鳥インフルエンザウイルス(H5N2、H5N3、H5N9、H7N7、H9N2)に比べ、H5N1では膜融合におけるpH感受性(レンジ)が高いことを見出し、H5N1は従来の鳥インフルエンザに比べてより効率にヒト上皮細胞に感染し、増殖できることが示唆された。以上の結果をまとめた投稿論文作成に伴い、詳細な実験データの集積と再現性の確認が必要であり、最終年度はHAの細胞膜融合試験と上皮細胞株への感染試験を中心に再試を続けた。
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