平成24年度本萌芽研究では、ヒトで実施不可能な感染初期の抗HIV薬を用いた治療・予防投与の評価、即ち、性的接触に伴うHIV暴露並びに偶発的暴露(針刺し事故等)の際の早期(暴露後24 hr前後)の抗HIV薬剤投与によってもたらされる効果を仔細に検討することを目的とし、ヒトPBMC移植NOD/Scid/Jak3-/- マウス(hPBMC-NOJマウス)に蛍光発光 HIVmCherryを感染させたAIDSモデルマウスに抗HIV薬の一つであるraltegravir(RAL; インテグラーゼ阻害剤)の投与を行った。その後の薬剤効果の評価をin vivo imaging法、免疫染色法、血中HIV-1 p24抗原/HIV-RNAコピー量測定法で観察し、以下の所見が得られた。 HIVmCherry感染hPBMC-NOJマウスの投与群と非投与群を比較すると、投与群では(1) in vivo imaging による明瞭な mCherry シグナル検出は困難となり;(2)リンパ節の腫脹は抑制され; (3) 血中 HIV-1p24抗原量は全例(12例)で検出限界以下となる一方で、血中 HIV-RNAコピーが検出される個体が12例中2例あった。 さらに、その2例の血中HIV-RNA陽性マウスを詳細に検討したところin vivo imagingによって腹腔大網に微弱なmCherry蛍光シグナルが観察され、感染細胞の主たる分画は単球/樹状細胞系であることも明らかになった。これらの知見から、RAL投与開始までの期間、HIV(接種後24時間以内)に感染が確立した細胞はRAL投与下においても持続的にウイルスを産生する可能性が示唆された。以上のことより我々のモデルが治療によって抑制できないウイルス血症が生じる原因を検討するために有効な手段ともなり得ることが示された。
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