研究概要 |
モヤモヤ病は両側ウイリス動脈輪の閉塞による脳虚血と異常側副血管の異常新生による出血とを特徴とする疾患で、厚生労働省により特定疾患に指定されている。我が国には約13千人のモヤモヤ病患者が登録されている。モヤモヤ病は、成人だけでなく小児においても脳卒中を惹き起す。小児においては、脳動脈硬化による脳卒中が極めて稀であるため、小児の脳卒中の主因となっている。モヤモヤ病の病因は長い間不明であったが、10~15%の症例に家族歴を認めることや一卵性双生児の発症一致率が二卵性双生児より有意に高いことなどから、遺伝的要因の関与が示唆されていた。申請者らは、日本人MMD患者の全ゲノム相関解析により染色体17q25領域から疾患感受性遺伝子RNF213を特定し、MMD患者の72%に共通する創始者ミスセンス変異を同定した(Kamada, J Hum Genet, 2011)。更に、この変異のホモ接合体患者はヘテロ接合体より発症が早く、重症である事を見出した(Miyatake, Neurology,2012)。この創始者変異は不完全浸透を示し、保因者の浸透率と自然予後の解明は現在の重要課題である。本研究では、まず保因者を迅速に検出する迅速遺伝子検査法を確立し、簡便にRNF213遺伝子のモヤモヤ病感受性遺伝子型を検出する遺伝子診断法を確立した。次に、未発症の創始者変異の保因者を患者家族から4名同定した。その方々の頭部MRアンギオグラフィー(MRA)を実施し、正常対照者と所見を比較検討している。現在のところ、有意に異なる所見を認めていないが、今後症例数を増やし、未発症保因者における血管病変の有無を明らかにする。
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