研究課題
発達障害と腫瘍発生の双方に関与する分子病態を解明し、両方の病態に有効な新規分子標的薬開発のための分子学的基盤を構築するために、広汎性発達障害と神経芽腫を併発した患児(症例1)および重度の精神発達障害を合併した横紋筋肉腫の患児(症例2)の初発、再発の腫瘍検体を用いて、HiSeq2000によるexome解析を行った。症例1におけるexome解析の結果、腫瘍細胞に特異的なアミノ酸置換の変化を伴うsomatic変異は初発検体で5個、再発検体で32個検出された。初発、再発腫瘍で共通する変異はALKの1174ミスセンス変異のみであった。germline変異としては、SNPのデータベースに登録のない、かつアミノ酸置換の変化を伴うものとしては約300個検出された。この中には、家族性のミオクローヌスてんかんの原因遺伝子と考えられるCSMD2のミスセンス変異が含まれていた。CSMD2は胎児脳や中枢神経系で高発現している膜貫通蛋白であるが、機能に関しては十分に解明されていない。うつ病や他の精神疾患との関連性も報告されている。興味深いことに、この遺伝子は神経芽腫で高頻度に欠失している1p34領域に存在するが、本症例の腫瘍でもこの領域の欠失が確認されている。症例2では、腫瘍細胞に特異的なアミノ酸置換の変化を伴うsomatic変異は初発検体で9個、再発検体で24個検出された。初発、再発腫瘍で共通するドライバー変異は確認されなかった。本症例特異的なgermline変異は約450個検出された。この中に神経発達に関与する接着分子であるCNTN6が含まれていた。この遺伝子は自閉症の発症に関与することが知られており、また卵巣がんなどではがん抑制遺伝子と考えられている。以上の結果より、CSMD2およびCNTN6の異常は、自験例において発達障害と腫瘍発生の双方に関与する標的分子の一つである可能性が示唆された。
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