研究概要 |
先天性甲状腺機能低下症の原因となる遺伝子(TSH receptor (TSHR), Na-I synporter (NIS), Pendrin (PDS), Thyroid peroxidase (TPO), Dual oxidase 2 (DUOX2), Dual oxidase maturation factor 2 (DUOXA2), Iodotyrosine deionidase (IYD)など)の分子遺伝学診断をできるようにすることを目的に研究解析を続けている。 これまでにTSHR, NIS, TPO, DUOX2 IYD, THRBの各遺伝子について、PCR法とダイレクトシーケンス法を組み合わせた解析法にて遺伝子変異を検出できる状態を立ち上げた。とくにDUOX2, TPO, THRBについては新規変異を同定した。なかでもDUOX遺伝子については国内最多の12の新規変異を新たに同定し、DDBJ/EMBL/GenBankデータベースに、AB779681, AB779682, AB779683, AB779684, AB779685, AB779686, AB779687, AB779688, AB779689, AB779690, AB779563, AB779708のaccession numberで登録した(現時点では非公開)。 もっとも変異が多く検出できたDUOX2遺伝子についてはMLPA法を現在開発中である。 当科で診療中の患者のうち35例について包括的に解析し、臨床像と原因遺伝子の関係を明らかにすため、次世代シーケンサーによる網羅的診断法を開発している。これについては国立成育医療研究センター内分泌研究部(深見真紀室長、長崎啓祐研究員)との共同研究を今年より始めている。この研究については滋賀医科大学だけでなく成育医療センターの倫理委員会の承認を受けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.TSHR,NIS, TPO, DUOX2 IYD,THRBの各遺伝子が当初、PCR法とダイレクトシーケンス法を組み合わせた解析法にて遺伝子変異を検出できる状態を立ち上げる予定であったが、Thyroid hormone receptor β (THRB)の解析までできるように研究体制を整えたこと。 2.DUOX2, TPO, THRBについては新規変異を同定したが、なかでもDUOX遺伝子については国内最多の12の新規変異を新たに同定し、DDBJ/EMBL/GenBankデータベースに、AB779681, AB779682, AB779683, AB779684, AB779685, AB779686, AB779687, AB779688, AB779689, AB779690, AB779563, AB779708のaccession numberで登録できたこと。 3.本研究では、次世代シーケンサーによる先天性甲状腺機能低下症原因遺伝子の網羅的な解析を行うための基礎的研究と位置づけていたが、同じ研究を行う国立成育医療研究センター内分泌研究部(深見真紀室長、長崎啓祐研究員)との共同研究を行えることとなり、実際に35例について次世代シーケンサーによる解析を始められたことである。
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今後の研究の推進方策 |
1.TSHR,NIS, TPO, DUOX2 IYD,THRBの各遺伝子による当科症例の解析はこれまでどうり続けるが、その上でPDS、MCT8など確立できていない原因遺伝子についてのPCR法とダイレクトシーケンス法を組み合わせた解析法を確立してゆく。 2.最も変異が多く認められたDUOX2については、エクソンの欠失や重複を同定できるようにMPLA法の開発を行う。この解析法については、いまだ市販のキットの販売が行われておらぜ、できれば本疾患の診断に携わる研究者に役立つと思われる。 3.新しく発見した各遺伝子の変異についてはこれまで通りDDBJ/EMBL/GenBankデータベースに登録し、世界的に発信してゆく。 3.新たに始めた成育医療研究センターのとの共同研究による次世代シーケンサーによる先天性甲状腺機能低下症原因遺伝子の網羅的診断法の開発については、世界的な先駆けとなるため精度の高い診断法を開発してゆく。それにより病態、症状と原因遺伝子の関係を明らかにし、臨床での役立つ結果を発信できるようにする。
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