研究課題/領域番号 |
24659497
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
谷池 雅子 大阪大学, その他の研究科, 教授 (30263289)
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研究分担者 |
下野 九理子 大阪大学, その他の研究科, 講師 (60403185)
毛利 育子 大阪大学, その他の研究科, 准教授 (70399351)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / オキシトシン / ADOS-G |
研究概要 |
オキシトシン(OT)は、点鼻投与による成人自閉症患者での社会性の改善や行動の改善が報告されているが、単回投与による効果を示したものが主であり、また子どもを対象としたものはない。本研究では、大阪大学医学部倫理委員会の承認を受けて、自閉症スペクトラム障害(ASD)をもつ小児に対する長期的OT点鼻治療の効果と安全性を検討した。 初年度は、当院受診中の10歳以上15歳未満のASD男児8名(DQ/IQ20-101)に対し非盲検で長期的OT点鼻投与を行った。用量漸増法(8U/doseより開始、8Uずつ24U/doseまで2か月ごとに漸増)を用い、各段階の前にはプラセボ期間を設けた。評価はAutism Diagnostic Observation Schedule Generic (ADOS-G)、子どもの行動チェックリスト(CBCL)、Aberrant Behavior Checklist日本語版(ABC-J)で行い、また投与期間中、血圧測定および、血液・尿サンプルを採取して副作用のモニタリングを行った。 その結果。ADOS-GではOT投与により8名中6名でコミュニケーション及び社会的相互作用の有意な改善を認めた。CBCL、ABC-Jでは下位項目で改善傾向が見られたものはあったものの、統計的に有意な改善は見られなかった。養育者からは8名中5名で何らかの良い効果が報告され、特に言語的なやりとりの質の改善が、短い文で会話可能なASD児達において見られた。服薬コンプライアンスは良好で、明らかな副作用は認めなかった。 以上、予備的な検討ではあるが、OTが小児に対しても安全に長期的に投与できることが世界で初めて示され、自閉症の小児に対するOT治療の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書では、平成24年度の計画は以下の通りである。自閉症または自閉性障害として外来受診中の10歳以上15歳未満の男児を対象として、open-labelで、全員に対して同一プロトコールにて、オキシトシン製剤あるいはプラセボを約6か月間、1日2回、点鼻する。開始前に、遺伝子多型の解析のためにリンパ球からゲノムを抽出し、行動観察と発達の評価を行う。効果の評価は各段階での養育者による評価と、投与前と投与終了前の行動観察検査により行う。投与前および投与期間中は尿および血液検査を行うと同時に、血圧測定等を行い、オキシトシン濃度測定とともに副作用のモニタを行うとしている。 10歳以上15歳未満のASD男児8名(DQ/IQ20-101)に申請書通りに、オキシトシン投与を行い、結果をJ Child Adolesc Psychopharmacol (Impact Factor 2.88) に報告した。これは自閉者患者に対する長期投与としては世界で初めてのものである。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の予備的検討では、オキシトシンの点鼻は、自閉症児のコンプライアンスが良い、安全な治療であるということがわかったが、効果を立証するためには、randomized-control studyを施行する必要がある。さらに、早期治療がより効果的であるという原則からは、より低年齢への投与が望ましい。さらに予備的検討からは、知的障害のある子どもに明らかな効果が認められた。そこで、次年度以降は、知的障害のある自閉症児に限定して、小学校1年―3年の40名を対象に、Randomized Control Trialにより、オキシトシン点鼻両方の効果判定を行う。医学系研究科の倫理委員会の認証は既に得た。
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次年度の研究費の使用計画 |
オキシトシン製剤であるシントキシン点鼻薬を輸入しているが、納期が遅れため、24年度の研究費に未使用額が生じた。次年度に納入されるため、今年度行う研究計画と併せて実施する。研究費はオキシトシン製剤ならびに測定用RIの購入費、外注検査の費用、ならびに学会発表のための旅費に使用する。
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