研究課題/領域番号 |
24659497
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
谷池 雅子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 教授 (30263289)
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研究分担者 |
下野 九理子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 講師 (60403185)
毛利 育子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 准教授 (70399351)
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / オキシトシン / 視線計測 / ADOS-G |
研究概要 |
自閉症スペクトラム障害(ASD)については、パニックや問題行動についての対症的な薬物治療が行われているが、中核症状に対する薬物療法はない。trust hormoneとして知られるオキシトシン(OT)は、ASDの中核症状に対する効果が期待されており、OTの点鼻投与による成人自閉症患者の社会的行動の改善が報告されているが、単回投与による効果、かつ社会性を検討する課題による変化を示したものが主であり、長期投与、また行動の変化による効果判定を行った研究は少ない。さらに、子どもを対象とした研究はまだない。我々は、10歳以上15歳未満の自閉症スペクトラム障害(ASD)男児8名に対して非盲検にてOTの長期投与を行い、コンプライアンスの良さ、安全性を予備的検討にて示した。社会的相互作用における変化が認められた男児もいたが、症例数が少なくRCTではないために有効性を検討することは不能であった。今年度は、有効性の検討を目的として、ASDの子どもに対するOTの効果をRCTにて検証する研究を開始した。具体的には、小学校1年~3年生の、35<IQ<75のASD男児に対して、double-blind,cross-overにてOT、またはplaceboを点鼻投与し、2週間おきに、副作用と変化をチェックするというプロトコールである。行動の変化は、社会性や問題行動に特化した質問紙と視線計測を含めた観察によりチェックする。現在6名が研究を終了し、3名が継続、またはエントリー中である。コンプライアンスは極めて良く、明らかな副作用は出現していない。40名で効果判定をする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書に記載されている内容、即ち、被験者が合計20 名に達するまで、初年度と同じプロトコールでオキシトシン投与を続行し、投与前後の結果を統計学的に比較し、効果の有無と安全性について検証を行うことについては、既に解析を終了し、結果をJ Child Adolesc Psychopharmacol (Impact Factor 2.88) に報告した。 これは自閉者患者に対する長期投与としては世界で初めてのものである。 さらに、医学系研究科の倫理委員会の承認を得て、低年齢の知的障害のある男児を対象としたオキシトシンのrandomized-control studyを開始して、問題なく研究を遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
知的障害のある自閉症児に限定して、小学校1年―3年の40名を対象に、Randomized Control Trialにより、オキシトシン点鼻両方の効果判定を行う。 シントキシン点鼻薬を輸入購入する納期が遅れため、25年度の研究費に未使用額が生じたが、次年度に納入されるため、今年度行う研究計画と併せて使用する。 さらに、目標数の被験者をリクルートするために、ホームページを用いたり、専門病院に依頼して期間内での研究完結をめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度からは、予備的検討から明らかな効果が認められた知的障害のある自閉症児に限定して、小学校1年―3年の40名を対象に、Randomized Control Trialにより、オキシトシン点鼻両方の効果判定を行うことにしたが、認知機能の制限をつけたことと、年少児のために、被験者のリクルートが当初の予想を下回った。そのため、シントキシン点鼻薬の輸入購入額や、解析に要する費用が少なくなり、平成25年度の研究費に未使用額が生じたが、次年度に納入されるため、今年度行う研究計画と併せて使用する。 平成26年度は、被験者のリクルートに重点をおき、達成目標の40名に対してオキシトシン点鼻投与(それに対応する輸入購入額が100万程度)を行い、さらに、効果判定や遺伝子解析、さらに国際学会発表のために経費を使用する。
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