研究課題/領域番号 |
24659498
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
山口 清次 島根大学, 医学部, 教授 (60144044)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脂肪酸β酸化 / 細菌毒素 / タンデムマス法 / β酸化能 / 急性脳症 / 小児薬物 / 発熱ストレス |
研究概要 |
平成24年度に以下のような研究成果を得た。 1)食中毒菌のセレウス菌の毒素であるセレウリドによるβ酸化系への影響:タンデムマスと培養細胞を用いてβ酸化能を評価するin vitro probe (IVP) assay を用いた。セレウリドの適切な濃度を検定した。セレウリドの添加濃度1, 100, and 1,000 ng/mLで検討した。1 ng/mLでは変化なく、100 ng/mLでは著しいβ酸化障害がみられたため、50 ng/mLの実験系が適切と判断された。正常者の細胞を用いてセレウリド50 ng/mLで実験を行ったところ、脂肪酸代謝異常症であるグルタル酸血症II型の重症型のプロフィールを示した。セレウリドによる急性脳症がβ酸化系、特に電子伝達フラビンタンパク(ETF)を傷害する可能性が示された。 2)感染時に上昇するサイトカインのβ酸化に及ぼす影響:急性脳症で上昇するといわれているいくつかのサイトカイン(IL1β、 IL10、INFγ、またはTNFαなど)をIVP assayの実験系に加えてβ酸化能への影響を調べた。各サイトカイン10 ng/mLで添加した条件で、IL1βとTNFαが長鎖脂肪酸β酸化を阻害することが観察された。 3)細菌毒素の精製:セレウス菌毒素のセレウリドは名古屋大学から供与された。平成24年度は麻布大学(獣医学部)で精製されたO-157病原大腸菌のベロ毒素の供与を受けた。種類を増やして実験するために他の毒素の精製を依頼している。 4)毒素による代謝障害のレスキュー法の検討:何らかの毒素がβ酸化を阻害することが判明した場合、レスキューを目的として、いくつかの薬剤の障害軽減効果あるいは増悪効果の検討を計画中である。平成24年度アセチルサリチル酸のβ酸化阻害効果を観察したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
小児に対する種々の感染ストレス等のβ酸化障害の評価が、IVP assayで可能なことを確認した。しかし研究力者との日程調整がつかず、年度内に研究打ち合わせが持てなかった。打合せ後、細菌毒素の精製を待って、いくつかそろった段階で毒素の検定に入る予定である。
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今後の研究の推進方策 |
感染を契機に起こる小児の急性脳症の発症機序を明らかにするため、以下の研究を進める。 1.細菌毒素のβ酸化への影響の評価 2.種々の薬剤のβ酸化系への影響の評価 3.発熱ストレスや、サイトカインのβ酸化系への影響の評価を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究協力者との日程調整がつかず打合せが遅れ、細菌毒素の精製が進まなかったため未使用額(944,420)が発生した。細菌毒素の精製をすすめ、いくつかそろった段階で毒素の検定に入る予定である。 1.細菌毒素の精製:研究協力を依頼している麻布大学で、食中毒菌であるカンピロバクター、および病原大腸菌の毒素を生成する(約30万円)。 2.細菌毒素のβ酸化能への影響評価のための細胞培養等の試薬類、器具類(70万円) 3.研究協力者との研究打ち合わせ、情報提供:麻布大学教官を島根大学に招いて研究打ち合わせをする。農学畜産のサイドから細菌毒素の精製と抗体作成にセミナーを依頼し、研究計画について討議する。(2名の旅費宿泊費・謝金として約25万円) 4.学会研究会参加:国際新生児スクリーニング学会(インド)、日本周産期新生児学会(横浜)、小児消化器栄養学会(東京)への参加(計40万円)。 5.論文投稿(10万円)、学会参加費(5万円)
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