研究課題
平成25年度に以下のような研究成果を得た。1)細菌毒素のβ酸化に対する影響:セレウス菌毒素のセレウリドを培養細胞の培地に加えて培養すると、β酸化障害をきたすことを明らかにしたが、今年度は、これと比較をするため、麻布大学(獣医学部)から供与された病原大腸菌ベロ毒素と、カンピロバクターの毒素を加えた培地でβ酸化能をin vitro probe assayによって評価した。加えた量は、細胞死の起こる量の1/10で行った。その結果、ベロ毒素もカンピロバクター毒素もβ酸化系には有意な影響を及ぼさなかった。このことからセレウリドだけが特異的にβ酸化を抑制する毒素であることが明らかになった。2)細胞の培養環境のβ酸化におよぼす影響: 感染時に高熱環境(41℃)におけるβ酸化系におよぼす影響をIVP assayによって検討した。同時に低温下(33℃)でも比較検討した。その結果、高温下ではβ酸化は亢進して中間代謝体は減少する傾向があること、長鎖脂肪酸代謝障害のある患者の細胞では長鎖脂肪酸のβ酸化が阻害されることが観察された。一方、低温下では、これらが改善することが観察された。長鎖脂肪酸の脆弱な体質の小児が発熱時に臨床的に増悪することを裏付けることが推測される。3)発熱時に増加するサイトカインのβ酸化におよぼす影響について4種類のサイトカインを検討した。その結果、IL1βとTNFαが長鎖脂肪酸β酸化を阻害し、IFNγとIL10はβ酸化に対する有意な影響は、アシルカルニチン量のレベルでは観察されなかった。さらにATP測定などによる機序解明が必要である。
2: おおむね順調に進展している
セレウリド菌以外の細菌毒素のβ酸化への影響を明らかにした。また感染時の環境によるβ酸化の変化についてもいくつかのことが明らかになった。高熱環境下で長鎖脂肪酸の代謝が阻害されること、低温下ではこれが改善すること、また解熱剤として使用されるアスピリンは長鎖脂肪酸の代謝抑制をすることが明らかになった。これ以外の解熱剤、サイトカインの影響などについて、今後の展開に有用な情報が得られた。
1)セレウリドによる小児の急性脳症、突然死に発展する機序を解明するため、アシルカルニチンのみならず、アシル-CoA類やATP測定を同じ実験系で行う。2)感染発熱時に使用される解熱剤(アスピリンの他、メフェナム酸やジクロオフェナクなど)の影響、増加するサイトカインのβ酸化におよぼす影響などについて検討する。3)高温下、または低温下におけるβ酸化への影響を検討して、小児の感染時の安全な管理法の向上に貢献する。
当該年度で使用する消耗品等はほぼそろっていた。残金では購入できない金額のものを次年度で購入するため。細胞培養用試薬、タンデムマス検査試薬、ATP測定試薬等
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日本マス・スクリーニング学会誌
巻: 23 ページ: 270-276
日本マス・スクリーニング学会誌
巻: 23 ページ: 49-53
臨床病理
巻: 61 ページ: 817-824