研究課題
平成26年度に以下の研究成果を得た。1)細菌毒素のβ酸化に対する影響:セレウス菌毒素のセレウリドはβ酸化障害を介して乳児の急性脳症を引き起こす可能性が高いことを、正常細胞を用いたin vitro probe (IVP) assayによって示した。その異常パターンは電子伝達フラビンタンパク(ETF)かまたはETF脱水素酵素(ETFDH)の欠損によって起こるグルタル酸血症Ⅱ型の重症型に類似していた。セレウス菌毒素は、ETFまたはETFDHを阻害する可能性が高いことが分かった。2)細胞の培養環境のβ酸化におよぼす影響:高熱環境(41℃)では、主に長鎖脂肪酸β酸化が阻害される可能性を示した。今年度、33℃の低温下で検討したところ、先天性β酸化異常症でみられる異常代謝産物は減少した。このことは低温下ではβ酸化障害を緩和する可能性がある。3)解熱剤のβ酸化におよぼす影響:かつてインフルエンザや水痘患者にアスピリンが投与された患者群では、そうでない患者に比べてライ症候群に発展する確率が高いことが示された。原則として小児ではアセトアミノフェンのみが安全な解熱剤として認知されている。正常細胞の培養液に3種類の解熱剤、サリチル酸(アスピリンの代謝産物)、ジクロフェナク、およびアセトアミノフェンを添加してIVP assayを行った。その結果、アセトアミノフェンではβ酸化への影響はみられず、他の2者は主に中鎖脂肪酸のβ酸化を抑制するパターンが観察された。このことはアセトアミノフェンが安全な解熱剤として認知されている臨床的観察と一致する。小児医療におけるより安全な解熱剤使用の根拠を示した。
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