研究課題/領域番号 |
24659511
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
寒竹 正人 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80327791)
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研究分担者 |
大槻 将弘 順天堂大学, 医学部, 助教 (50465051)
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キーワード | グルココルチコイドレセプター / DNAメチル化 / 早産児 / 相対的副腎不全 / グルココルチコイド耐性 |
研究概要 |
昨年度達成した分を検証したところ、一部分のデータに不明瞭な部分がみつかった。DNAの精製法を途中から変更したところ解析精度が上昇したのだが、古い精製法を用いた結果と新しい精製法を用いた結果に相違がみられた。そこですべての検体ではじめから新しい方法で精製したサンプルを用いて同一方法で同時に再解析を行った。その結果は驚くべきことに正常新生児では4日間でDNAメチル化に変化はなく、早産児においてのみ多くの領域でメチル化の増加がみられた。その結果、生後4日の時点で早産児は正期産児に比べてグルココルチコイドレセプター遺伝子プロモーターが高いメチル化を示していた。 この結果をうけて、さまざまな周産期因子との関連を解析した。4日間のメチル化の増加と有意な相関を示したものとして、アプガースコア、在胎週数、NICU入院、子宮内発育遅延があげられた。 一方、今回われわれが解析しているグルココルチコイドレセプター遺伝子は末梢血におけるもので、その高メチル化はグルココルチコイドレセプターの細胞表面の発現をおさえることによるグルココルチコイド抵抗性を意味すると考え、早産児に好発する相対的副腎機能不全による病態である慢性肺疾患、晩期循環不全の発症との関連を解析した。 その結果、4日間で有意なメチル化の上昇を示し、さらに生後4日の時点で正期産児に比べて早期産児で有意に高いメチル化を示していた4か所の部位の生後4日目の時点のメチル化率を用いてその後の慢性肺疾患、晩期循環不全の発症を予測することができた。 以上のことから早産児においては出生後4日間の環境によりグルココルチコイドレセプター遺伝子に変化をきたし、新生児期の合併症、特に相対的副腎不全によるものの発症に関与しているものと思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では昨年度までに周産期のパラメータとの関連を解析し、関連性のあるものに関して最終年度でコントロールスタディを行う予定であった。ところがそれ以上に日齢4のメチル化率により1か月あとの新生児合併症が予測できることが判明した。これは原因のわかっていない慢性肺疾患や晩期循環不全などを一義的に説明できる可能性があり、新生児学にとって大きなブレイクスルーになる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
当初は神経学的予後にに注目していたがその解析と並行して免疫学的解析も行う。対象範囲を拡大し、気管気管支軟化症や未熟網膜症など、炎症の関与が疑われる疾患も含めて解析を行う。 周産期環境との関連では採血回数や光環境、音環境との関連を解析し、可能であれば環境についてのコントロールスタディを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文投稿から査読までの時間が予想以上にかかり昨年10月から6か月を要した。さらに査読にあたっての出版社側の手違いがあり、本年4月に再投稿を行った。その関係で新規の研究に着手することが大幅に遅れることになった。 現時点ではまだacceptされていないが、1か月以内にはpublicationできる見通しである。open journalのため掲載に20万円ほどかかる。その後予定に従って新規の検体採取、測定を開始する。
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