1、24年度の目標としたGR遺伝子メチル化解析方法の確立であるが、試行錯誤の末に簡便で効率的な方法を開発することができた。適切なプライマーを設計し、さらにPCR反応を2回行うことが重要であった。さらに増幅したDNA断片を電気泳動後に染色する方法が従来の臭化エチジウムではなくステインブルーという色素を用いる方法を用いることでダイレクトシークエンスの精度、再現性が飛躍的に向上した。ここまでで1年半が必要であった。 2、25年度の目標は早期産児におけるGR遺伝子メチル化の変化を検出することで、正期産児と早産児それぞれにおいて出生直後と生後4日にGR遺伝子メチル化を測定した。正期産児では4日間で全く変化はみられなかったが、早産児では33CpGサイト中12サイトで有意にメチル化の上昇が観察された。わずか4日間で明らかな変化が認められたことは予想以上で、入院期間中はさらに変化が強くなることは想像に難くない。12サイト中にNGFI-A(nerve growth factor inducible protein A)という炎症に伴って活性化される核内分子結合部位が含まれており(CpG16)、その部位のメチル化率の上昇が慢性炎症のためグルココルチコイド投与を必要とする慢性肺疾患の発症と関連していることが判明した。同時に晩期循環不全という超低出生体重児を中心にみられる新生児期の相対的副腎不全の発症とも関連していることもわかった。これらの病態がグルココルチコイド抵抗性がベースとなる可能性があることを示唆している。生後4日間の何がそうさせているのかは今回の検討からははっきりはしていないが、今後詳細に解析を行う予定である。 3、26年度に予定していたssc(skin to skin contact)などの母子接触であるが、ベビーオイルを用いたマッサージにより発赤や発疹などの皮膚トラブルが発生したため導入を中止した。また研究代表者が異動により研究環境が変わったため最終年度に新たな備品の購入が必要となった。
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