研究概要 |
本研究は、申請者が同定したLy-6 superfamilyの一員で分泌蛋白であるSLURP-2が尋常性乾癬皮疹部で有意に発現亢進していることから、①SLURP-2の乾癬病態形成における上流遺伝子としての可能性の有無、②ヒトの細胞を用いたin vitroでの表皮-血球細胞クロストークによる3次元培養系の構築とSLURP-2誘導による乾癬表皮の作製を目的とする。 ① を明らかにするため、SLURP-2/FLAG発現ベクターを作製し、ヒト正常表皮角化細胞に遺伝子導入し、乾癬の病態形成において重要な役割を果たしている炎症性サイトカイン、ケモカインおよび抗菌ペプチドの発現に与える影響についてRT-PCR, cytokine array, dot blotを用いて検討した。その結果、SLURP-2発現細胞ではコントロール細胞に比べて、IL-1α, IL-1β, IL-6, IL-8, IL-23p19, GM-CSF, CCL20, CAMP/LL-37, human beta-defensin-2などの発現を亢進させる事が明らかになった。また、SLURP-2発現細胞では、TLR9の発現を誘導し、IFN-βを表皮角化細胞から発現させる事が示された。これらの結果から、乾癬病変部の特徴の一つである Munro’s microabscessやKogojの海綿状膿疱といった表皮内好中球集積や現在解明されているTh17/IL23を軸とした表皮角化細胞と血球細胞とのクロストークによる乾癬病態形成の一連の流れをSLURP-2が誘導できる可能性があることが示唆された。よって、本遺伝子は乾癬病態形成において上流遺伝子である可能性が極めて高いと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
SLURP-2分泌蛋白を安定的かつ十分量得るため、SLURP-2/FLAG融合蛋白安定形質発現株の樹立をヒト表皮角化細胞株であるHaCaT細胞あるいはヒト正常表皮角化細胞を用いて作製する。得られた精製蛋白を用いて、SLURP-2の血球細胞への作用についての解析を、当初予定していたT細胞、plasmacytoid DCのみでなく、好中球も含めて、cytokine array membraneの他にRT-PCR, ELISA, dot blot等を用いて、サイトカイン、IFN, ケモカインなどの発現について検討する。T細胞については、FACSで血球分類を行なう。 乾癬患者組織を用いた免疫染色で、SLURP-2が好中球でも発現している事が新たに判明したことから、好中球に対するSLURP-2の機能解析が必要と考えられたため、蛍光多重染色法を用いてSLURP-2とIL-17およびLL-37との関連性について検討することを新たに加える。 SLURP-2誘導による表皮角化細胞―血球細胞のクロストークによるin vitroでの3次元培養を用いた乾癬表皮形成については、T細胞や樹状細胞のみでなく、好中球も含めた培養系を構築して検討する。 SLURP-2の発現を抑制した場合の正常表皮に及ぼす影響については、当初の予定通りsiRNAを作製しヒト正常表皮角化細胞を用いて検討する。
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