研究概要 |
昨年度までに同定した転写因子である下垂体腫瘍転換因子cDNAをpCMVのCMVプロモーター下流に組み込み、下垂体腫瘍転換因子を真核細胞でubiquitousに発現するpCMV-PTTG1ベクターを作製する。これを、マウス培養正常ケラチノサイトに遺伝子導入して、カルシウムスイッチをONにして分化させる分画(0.12 mM Ca)と、そのまま未分化状態の分画(0.05 mM Ca)とで、①位相差顕微鏡による細胞形態観察、②その分化マーカー(ケラチン5/ケラチン4, ケラチン1/ケラチン10, インボルクリン、ロリクリン)をウエスタン法によって定量比較、③分化マーカーのルシフェラーゼ・コンストラクトとともに遺伝子導入し、ルシフェラーゼ・アッセイを行った。これらにより、下垂体腫瘍転換因子がin vitroでケラチノサイトの分化および分化マーカーの発現に及ぼす影響が明らかとなった。さらに、pCMV-PTTG1ベクターを組み込み、下垂体腫瘍転換因子を恒久的に発現するマウス培養正常ケラチノサイトの三次元培養を行い、出来上がった表皮構造を病理組織学的に検討した。その結果、コントロールの三次元培養表皮に比べて、体腫瘍転換因子を恒久的に発現する三次元培養表皮は、組織が厚くなっており、個々のケラチノサイトの増殖能が亢進していた。さらに、体腫瘍転換因子を恒久的に発現する三次元培養表皮は、 ケラチン1/ケラチン10, インボルクリン、ロリクリンなどの分化マーカーの発現が減弱しており、下垂体腫瘍転換因子はケラチノサイトを未分化な状態に保つために重要な役割を果たしていると考えられた。
|