近年、抑制性のはたらきをもつB細胞の新しいサブセット「制御性B細胞」が見出され、種々の免疫疾患に密接に関わっていることが明らかになってきた。このような制御性B細胞は脾臓辺縁帯B細胞の一部と考えられており、CD1dhighCD5+の表現型をもち、L-10を産生する。このようなconventionalな制御性B細胞が、強皮症に代表される病態である自己免疫疾患における線維化をも抑制できるかどうかを、CD19欠損マウスを用いて検討した。CD19欠損マウスでは、脾臓辺縁帯B細胞が欠損している。MHC不一致マウスの骨髄移植による慢性graft versus host disease (GVHD) を誘導する系で、CD19欠損マウスでは慢性GVHDによる皮膚の線維化が著明に増悪した。さらに、CD19欠損マウスに野生型マウス由来の制御性B細胞を含む分画を移入したところ、慢性GVHDによる皮膚の線維化は改善し、制御性B細胞が線維化病態を抑制できることが示された。また、B細胞を標的とする薬剤を探査し、FTY720が同様のMHC不一致マウスによる骨髄移植・慢性GVHDモデルにおいて、病態を改善させることを見出した。 さらに、CD19の制御するシグナル伝達分子の中で有力な候補と考えられるPTENがB細胞特異的に欠損するマウスを作製した。このようなB細胞特異的PTENコンディショナルノックアウト(cKO)マウスにおいては、PTEN-cKOマウスでは、これまでに同定されていない制御性B細胞が著増しており、この制御性B細胞が線維化を協力に抑制することが明らかになった。
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