研究課題
Mas TRECK TgマウスDT処理後、肥満細胞のみ除去された状態で接触皮膚炎を確認したところ野生型に比べ接触皮膚炎反応が減弱していることが明らかとなった。更に異なる2つのハプテンを用いて検証したところ、どちらのハプテンでも接触皮膚炎反応が減弱することが明らかとなった。さらにoxazoloneの濃度を低濃度もしくは高濃度と変えて感作を行ったところ、どちらの濃度においても接触皮膚炎反応が減弱することが明らかとなった。今回、我々はMas TRECK Tgマウスを用いて、肥満細胞が接触皮膚炎反応に大きな影響を与えていることを証明した。一方、「循環する肥満細胞」と表現され肥満細胞の代用としか考えられてこなかった好塩基球が、近年、ある状況下でTh2分化を誘導する重要な働きを担うことが明らかになった。そこで、Bas TRECKマウスにおいて、ハプテンを用いた接触過敏反応およびハプテン反復塗布モデルにて好塩基球の役割を検証した。好塩基球欠損マウスにおいてハプテンを用いた接触皮膚炎を誘導したところ耳介腫脹は変化がないことが明らかとなった。これは肥満細胞欠損マウスと異なる結果となった。一方、ハプテン反復塗布モデルでは好塩基球欠損マウスにおいて急性期の炎症反応が有意に減弱している事が明らかとなった。しかしながら、オボアルブミン(OVA)誘発皮膚炎モデルでは皮膚炎に野生型マウスと好塩基球マウスの差が見られなかった。以上より、皮膚免疫において肥満細胞は接触皮膚炎において重要な働きを担う事が明らかとなり、好塩基球は接触皮膚炎では役割を担わないもののハプテン反復塗布モデルでは重要な細胞という事が明らかとなった。我々は本研究において肥満細胞および好塩基球の皮膚免疫における役割の違いを明らかとした。
1: 当初の計画以上に進展している
平成24年度は新規肥満細胞欠損マウス(Mas TRECKマウス)において、ハプテンの種類、濃度問わず接触皮膚炎に肥満細胞が関与していることを明らかとした。更に新規好塩基球欠損マウス(Bas TRECKマウス)では、抗原の違いでTh2誘導に関与しているかどうか明らかとした。つまり好塩基球はハプテン抗原に対してはTh2誘導に重要な役割を担うもののタンパク抗原に対してはTh2誘導に関与しないことがわかった。以上の新規発見に関しては文献15において報告している。このことは当初の研究計画以上に進展している内容である。
Flaky tailマウスとMas TRECK TgマウスもしくはBas TRECK Tgマウスを掛け合わせることで、アトピー性皮膚炎の病態形成における肥満細胞、好塩基球の役割を検証していく。肥満細胞除去時、もしくは好塩基球除去時のクリニカルスコア、皮膚組織所見、更には病変部への浸潤細胞の評価を行う。更にはこれらマウスにダニタンパク抗原を塗布し惹起される炎症を検証する。また、MaS TRECK TgマウスもしくはBas TRECK Tgマウス単独で用いたハプテン反復塗布によるアトピー性皮膚炎モデルでの解析結果と照らし合わせ、皮膚バリア機能の異常もしくはフィラグリン遺伝子変異存在下での肥満細胞、好塩基球の炎症時の働きの違いを検証していく。さらに、上記の研究成果をもとに、肥満細胞、好塩基球とT細胞や樹状細胞などとの相互作用やアトピー性皮膚炎病態形成における肥満細胞もしくは好塩基球の重要分子同定を行う。アトピー性皮膚炎モデルマウスで得られた結果をもとにヒト臨床検体を用いた検証を行う(倫理委員会承認済み、課題名:免疫・アレルギー性皮膚疾患の免疫学的解析、申請番号:第E778番)。具体的には、アトピー性皮膚炎患者の血液および血清、また皮膚病理組織をもとに健常人の検体との比較を行う。モデルマウスを用いて明らかとなった新規重要分子の発現レベル、機能解析を行うことでヒトにおける実際の疾患での関連性を明らかにする。
該当なし
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