研究課題
アトピー性皮膚炎や高齢者では皮膚バリア機能低下により、難治性の皮膚炎を生じ、患者のQOLを著しく低下させるのみでなく、医療費の増大や労働生産性も大きく損なう。現在治療薬として使用されているバリア機能改善剤には抗炎症作用はなく、またステロイド外用薬はその副作用から長期の使用が制限される。本研究ではこれらの問題を、解決するためにバリア機能の改善と抗炎症作用を合わせ持つ皮膚に優しい安全で有効な外用剤の開発を目的とした。まず、我々はコレステロールに注目した。コレステロールは角質に含まれ、細胞の脂質二重膜の維持に必須な脂質であるばかりか、lipid raftに作用することでIgEや自然免疫を介する免疫応答に関与する免疫シナプスを調節する効果も期待できる脂質である。我々は、実験系としてオキサゾロンによる遅延型皮膚炎モデルを用いた。結果、コレステロール外用群ではコントロール群に比べて有意に耳介腫脹反応が軽減した。また、コレステロールの外用群では有意な炎症系サイトカインの低下は見られなかったが、細胞内コルチゾール活性化酵素である11β-HSD1の上昇がみられた。我々は以前に11β-HSD1は表皮の増殖抑制に関与することを報告している。さらに、11β-HSD1の遅延型皮膚炎における役割を検討するために、11β-HSD1ノックアウトマウスを用いて耳介腫脹反応を測定した。結果、ノックアウトマウスではコントロールマウスに比べて有意に耳介腫脹が増幅されることがわかった。また、11β-HSD1ノックアウトマウス由来の表皮角化細胞は野生型マウス由来にくらべ、ハプテンに対する炎症応答が増加していることがわかった。以上の結果より、コレステロールの外用は11β-HSD1の発現増加を介して、表皮の増殖抑制作用、炎症抑制作用をもつのではないかと考えられた。
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