研究課題
遺伝性皮膚疾患である表皮水疱症は基底膜接着分子欠損により生下時より一生涯表皮剥離を繰り返し、経過と共に表皮幹細胞を大量に消失してしまう。近年申請者は、表皮水疱症剥離皮膚から血中に放出されるHMGB1が骨髄間葉系幹細胞を皮膚へと動員し、表皮幹細胞機能を代償して水疱部皮膚の再生を誘導していることを明らかにした。本研究では、皮膚に動員された骨髄由来間葉系幹細胞の皮膚再生における役割を解明し、骨髄間葉系幹細胞動員による皮膚機能向上を可能にする新たな皮膚再生誘導医療法開発を目的として研究を進めた。具体的には、GFP骨髄移植マウスの背部に皮膚移植した後にみ換えHMGB1蛋白を静脈内投与し、植皮片の再生促進活性を種々の評価系で検討した。その結果、1)HMGB1投与群は非投与群と比較して、植皮片への骨髄由来PDGFRα陽性MSC集積が約3倍に増加することが確認された。2)HMGB1投与群は非投与群と比較して血管新生誘導因子Angiopoietin1、炎症抑制因子TSG-6の遺伝子発現が有意に増加する一方、炎症性サイトカインTNF-α遺伝子発現が有意に抑制した。3)HMGB1投与群は非投与群に比較して皮膚への炎症細胞浸が有意に減少していた。4)植皮片に集積した骨髄由来MSCは、表皮内でケラチン5/14陽性ケラチノサイトに分化し、壊死表皮の再生に寄与していた。5)VII型コラーゲン欠損表皮水疱症モデルマウス皮膚植皮系では、植皮片に集積した骨髄由来MSCは基底膜領域にVII型コラーゲンを供給し、表皮剥離を抑制的に制御した。即ち、HMGB1投与による骨髄MSCの損傷皮膚への集積促進により、血流改善、炎症抑制、表皮再生促進など種々のメカニズムによる機能的皮膚再生が誘導されることが明らかとなった。
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