研究課題/領域番号 |
24659534
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
橋本 隆 久留米大学, 医学部, 教授 (20129597)
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研究分担者 |
濱田 尚宏 久留米大学, 医学部, 講師 (40320204)
石井 文人 久留米大学, 医学部, 講師 (80330827)
土坂 享成 久留米大学, 医学部, 研究員 (50599313)
TEYE KWESI 久留米大学, 医学部, 研究員 (30599303)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2013-03-31
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キーワード | 眼型粘膜類天疱瘡 / インテグリンベータ4 / ヘミデスモソーム |
研究概要 |
失明に至る眼型粘膜類天疱瘡の抗インテグリンベータ4自己抗体の検出法と病原性の検 討について 眼型粘膜類天疱瘡患者血清において、従来の抽出液やリコンビナント蛋白を用いた免疫ブロット法では自己抗体を検出することができないことを踏まえ、まずヒトケラチノサイト培養細胞から、基底膜部のみを残す方法を用いて、豊富なヘミデスモソーム蛋白が濃縮している画分の単離法を確立した。この抽出液は、ヘミデスモソーム構成蛋白であるプレクチン、BP230、BP180、ラミニン332、インテグリンアルファ6、インテグリンベータ4を豊富に含んでおり、特にインテグリンアルファ6、インテグリンベータ4への反応を確認するのに有用な抽出液である。我々は、患者血清とこの新たな基質を用いて免疫ブロット法を施行し、半数以上の患者血清がインテグリンベータ4に反応することを見いだした。次に、同方法を用いて、眼粘膜類天疱瘡以外の多くの天疱瘡、類天疱瘡群の患者血清を用い免疫ブロット法を行ったが、少数のBP180型粘膜類天疱瘡とラミニン332型粘膜類天疱瘡患者血清を除き、ほぼどの自己免疫性水疱症においてもインテグリンベータ4との反応は見られなかった。さらに、眼粘膜類天疱瘡患者血清がインテグリンベータ4のどのエピトープと反応しているか確認するため、インテグリンベータ4細胞内及び細胞外ドメインの大腸菌発現リコンビナント蛋白を作製した。この細胞内ドメインのリコンビナント蛋白を用いた免疫ブロット法で、6割以上の患者血清が陽性反応を示したのに対し、インテグリンベータ4細胞外ドメインのリコンビナント蛋白を用いた免疫ブロット法ではほぼ反応は認められなかった。以上から、眼型粘膜類天疱瘡患者血清はインテグリンベータ4の細胞内ドメインに対する自己抗体を有していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
はじめに、希少な眼型粘膜類天疱瘡の患者血清を渉猟することが重要であったが、本学と国内外の眼科3施設から50例近くに血清が集まった。さらに今後30例以上の血清が集まる予定である。これだけの数の眼型粘膜類天疱瘡を渉猟できたことは、今回の研究の大きな成果と考えられる。また、ヒトケラチノサイト培養細胞からヘミデスモソーム分画を単離する新しい方法の確立にやや時間を要したが、その後、単離法を完全に確立できた。その後、ヘミデスモソーム分画を用いた免疫ブロット法で、この多くの患者血清がインテグリンベータ4に反応することを確認できた。 このように、今回の結果から、すでに、新たな抽出液を用いた免疫ブロット法はインテグリンベータ4への自己抗体を検出する方法として極めて有用であり、当初想定していなかった研究成果も得られた。さらに、インテグリンベータ4のリコンビナント蛋白を用いた免疫ブロット法で、その反応を確認できた。以上から、当初の研究は、概ね、当初の計画通りに進展している。 また、今回の研究の発展性として、このヘミデスモソーム分画を用いた免疫ブロット法が、眼型粘膜類天疱瘡以外の多くの疾患の異なった自己抗原を同時に解析出来る有用な検索法である可能性が示された、現在、本検査法を用いて、多くの疾患の検索を続けている。特に、ラミニン332型粘膜類天疱瘡、BP180型粘膜類天疱瘡、水疱性類天疱瘡、抗ラミニンガンマ1類天疱瘡、線状IgA水疱性皮膚症などの診断に有用になると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究の推進方策として、この培養ケラチノサイトから得たヘミデスモソーム分画を用いた免疫ブロット法が、眼型粘膜類天疱瘡以外の多くの疾患の異なった自己抗原を同時に解析出来ることを確認する。すなわち、本検査法を用いて、水疱性類天疱瘡、ラミニン332型粘膜類天疱瘡、BP180型粘膜類天疱瘡、抗ラミニンガンマ1類天疱瘡、線状IgA水疱性皮膚症、後天性表皮水疱症などの抗原解析を施行する。さらに、その結果から、それぞれの自己抗原のエピトープを同定し、そのリコンビナント蛋白を用いたELISA法を開発する。 今までは、多くの異なった水疱症の診断には、多くの異なった抗原源を用いた免疫ブロット法を施行する必要があった。しかし、今回のミデスモソーム分画を用いた免疫ブロット法を用いると、異なった疾患の血清を用いて、異なった自己抗原を同時に解析できる。これは診断法として有用であるだけでなく、今後、これらの異なった疾患、また、異なった自己抗原の病原性を検討する上で非常に有効であると考えられる。 さらに、多くの自己免疫性水疱症の病院を解明するため、マウス動物モデルの作製を行い、インテグリンベータ4自己抗体の病原性を直接証明するため解明を進めていく。さらに、多くの患者血液サンプルを用いて、Th1, Th2, Treg, Th17の分布をフローサイトメトリーでの解析や各種サイトカインとケモカインの測定を試み、免疫学的な相互作用機序の解明を行う。またこれらの研究方法や結果を学会に提示し、更なる深化を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
一般実験試薬、一般実験器具、各種抗体、各種酵素、タンパク質精製試薬・装置、細胞培養液、牛血清アルブミン等に費用がかかる。研究経費のすべては研究に要する実験試薬・実験器具、そのほかの消耗品が占める。研究の速やかな遂行を図るため必要最低限の設備備品の購入を予定している。 平成25年度では、一般実験試薬(各種抗体,核酸,酵素,培地等)に30千円、ガラス,プラスチック器具類に28千円、一般実験器具(樹脂製消耗品含む)に30千円、実験動物(家兎,マウス購入)に60千円を予定している。
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