研究概要 |
(1)PPAR-γがFAT/CD36の発現を制御する。ヒト、ラットの心臓微小血管由来の培養内皮細胞(Human and Rat Brain Microvessel enodothelial cells : HBMEC,RBMEC and MBMEC)において、FAT/CD36はPPAR-γの直接の標的因子か、炎症惹起物質で発現が抑制されるか、ピオグリタゾンでその抑制が解除されるか、その分子機序はいかなるものか、を検証した。HBMEC、RBMECはそれぞれベリタス、TOYOBOより購入した。これらの細胞を用いてmRNA発現をPCRで比較検討した。これらの細胞にアデノウィルスを用いてPPAR-γを強制発現すると、FAT/CD36は著明に誘導された。また、ピオグリタゾン単独投与(10mM)でもこれらの因子を誘導した。PPAR-γの強制発現した細胞にピオグリタゾンを添加すると、発現が相乗的に上昇した。この結果は、PPAR-γがFAT/CD36の発現を制御することを示している。FAT/CD36の発現が増加することによって、毛細血管内皮細胞の脂肪酸取り込みが増加し、臓器の代謝改善につながる可能性がある。肥満によりインスリン抵抗性が生じると、TNFαやその他の炎症サイトカインの産生が増加し内皮機能不全を生じ、FAT/CD36の発現が低下する。代謝改善薬であるPPAR-γアゴニストは、その作用に拮抗しFAT/CD36の発現を上昇することで内皮機能を改善する。インスリン抵抗性を有するうつ病の一部にこの病態が存在し、毛細血管内皮細胞の脂肪酸の取り込みを促進することで脳代謝を活性化し、うつ病が改善する可能性を示唆すると考えられる。 (2)毛細血管内皮細胞に発現するPPAR-γとFAT/CD36が、肥満モデルマウスの脳代謝・脳機能に関与するか。PG-E nullマウスを用いて検討した。PG-E nullマウスに通常食((E-2)を投与し、胃ゾンデを用いてピオグリタゾン10mg/kgあるいは溶媒のみを2週間以上、毎日投与した。それぞれに対してlocomotor activity、明暗選択試験、尾懸垂試験、強制水泳試験を実施し比較検討した。しかしながら、施行したいずれの測定項目でも有意差は認められなかった。これらの結果は、高度肥満や飢餓などの食物摂取の著明な負荷がなければ、PPAR-γ経路は活性化あるいま不活性化しないためと解釈した。
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