研究課題/領域番号 |
24659538
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
清水 栄司 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00292699)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 思春期うつ病 / 認知行動療法 / 性差 |
研究概要 |
本研究の目的は、思春期女子うつ病に対する認知行動療法プログラム開発を目的とした挑戦的萌芽研究として、生物心理社会モデルによる統合的なデータ収集を行うことにある。具体的に今年度は、生物モデルとして、マウスを用いた脳の性差とストレス反応の関連性について研究を推進した。このマウスの生物学的なデータから、将来的に、思春期女子うつ病の生物学的研究として、機能的脳画像研究を行う上での基礎的データとなりうる。これまでのマウスの行動実験は、統制しやすさから、オスのマウスが好んで用いられてきたため、メスのマウスの行動実験が、オスとどのように異なるかについての検討データは、非常に乏しい。今回の研究では、メスのマウスが、オスに比べて、ストレス対処行動、特に不安様行動について、恐怖条件付けパラダイムを利用してどのような差を示すかを検討した。結果、恐怖消去過程では、メスでは長いプロセスが必要で、明確な性差が確認された。同時に、発達過程において恐怖記憶の固定や、消去後の再燃は大きく異なっていた(Matsuda et al., in preparation)。このことは暴露療法の適用を考えたとき、恐怖の再燃を防ぐためには思春期という発達時期と性によってその方略を変える必要性を示唆する結果と考えている。また、社会的干渉と呼ばれる他のマウスの存在で恐怖記憶が変化する現象についての性差を検討する中で、現時点ではオスマウスでの検討が終了した。臨床面では、思春期に多く罹患し、うつ病を併発することの多い摂食障害患者に対する認知行動療法を継続して行い、一定の成果を得た。その中で、患者群と健常群での認知機能の差異が近赤外スペクトロスコピーによる計測で明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験は概ね順調に経過している。患者群に対する質問紙調査、および思春期特有の問題に対する認知行動療法プログラムの確立については、その背景となる生物学的評価が遅れているため、今後進展をはやめる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験は計画書記載のとおりに進行させる予定である。臨床面では、摂食障害患者群に認められた患者群と健常群での認知機能の差異は認知行動療法プログラム策定に取り入れたいと考えている。他は計画書に沿った進展を考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度同様、研究に使用する実験用試薬、動物、実験器具などの購入、学会旅行費、論文校正、投稿に用いる予定である。
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