研究課題/領域番号 |
24659540
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
三辺 義雄 金沢大学, 医学系, 教授 (60181947)
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研究分担者 |
山嶋 哲盛 金沢大学, 医学系, 准教授 (60135077)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 海馬 / Hsp70.1 / リソソーム / プロテオミクス / カルパイン / ヒドロキシノネナール / 酸化ストレス / カルボニル化 |
研究概要 |
Heat shock protein 70.1(Hsp70.1)はHsp70ファミリーの主要メンバーで、分子シャペロンとして熱や虚血によって損傷・変性したタンパク質をリソソーム内に運び、リサイクルすることで異常タンパクの蓄積を妨げニューロンを保護する。Hsp70.1はリソソーム内の小胞膜に局在し、スフィンゴミエリンからセラミドを産生することで、限界膜を保護している。サル海馬を対象として行った平成24年度のプロテオミクス解析によって、カルパインの生体内基質としてHsp70.1が同定され、虚血後のCA1においてHsp70.1の酸化損傷が10倍以上も上昇し、活性中心をなすArg469がカルボニル化を受けていることが判明した。 カルパインによる生体内基質の切断と虚血後に生じるリソソーム膜の破裂とは、神経細胞死と密接に関連する。そこで、活性型カルパインの生体内基質とヒドロキシノネナールのカルボニル化の標的は、いずれもHsp70.1ではないかという作業仮説を立てて解析した処、これを裏付ける結果が得られた。すなわち、in vitroの酸化ストレスをかけた正常海馬CA1のホモジナイズに、活性型カルパインを加えインキュベーショョンした後、Hsp70.1のC末端を認識する特異的な抗体を用いてイムノブロットを行いHsp70.1切断の有無とその程度とを検索した。その結果、無処理のHsp70.1はわずかしか分解されないのに対し、カルボニル化されたHsp70.1は、ヒドロキシノネナールの濃度に関係なく活性型カルパインによって顕著に分解された。以上より、酸化ストレスによってリソソーム膜を保護するHsp70.1が機能障害をおこし、リソソームが爆発することが神経細胞死の原因と推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
虚血性神経細胞死とアルツハイマー性神経細胞死の分子メカニズムには、予想した以上に共通点が多く、前者の研究から得られた知見や実験手法が後者にそのまま応用し得たため。
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今後の研究の推進方策 |
Hsp70とbis (monoacylglycero) phosphate (BMP)、acid sphingomyelinase(ASM)間の分子相関に着目しつつ、サルという個体の脳疾患モデルからリソソーム膜破裂による細胞死という生命現象の本質にさらに迫ってゆく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)リソソーム膜におけるHsp70.1、μ-calpainとBMPの相互作用 正常(非虚血)と虚血後1、3、5、7日目のサル海馬CA1を用いて免疫組織化学と免疫電顕により、各蛋白についてニューロン内での局在変化を観察する。同時に、免疫沈降法によってHsp70.1と結合しているBMPの量的変化を調べるが、これが困難な場合はHsp70.1とBMPの抗体を変える。 (2)Acid sphingomyelinase(ASM)酵素活性の測定とceramideの定量(酵素活性により生じた蛍光物質を検出する市販のキットを用いて、虚血負荷、酸化ストレス前後の海馬中のASM活性を高感度に測定する。同様に、試料等からスフィンゴ脂質を抽出し、LC/MS/MS でceramideの量を解析する。 上記の2つの実験に必要な一般抗体、蛍光色素付き抗体、エライザキット、およびその他の実験試薬の購入費用として前年度消耗品にて残高調整できなかった繰越金も合わせて予算を執行する。
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