研究課題/領域番号 |
24659540
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
三辺 義雄 金沢大学, 医学系, 教授 (60181947)
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研究分担者 |
山嶋 哲盛 金沢大学, 医学系, 准教授 (60135077)
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キーワード | サル / 海馬 / 神経細胞死 / アルツハイマー病 / リソソーム / Hsp70.1 / ビス(モノアシルグリセロ)リン酸 / 酸性スフィンゴミエリナーゼ |
研究概要 |
熱ショック蛋白70.1(Hsp70.1)とビス(モノアシルグリセロ)リン酸(BMP)、酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)間の分子相関に着目しつつ、脳虚血サルという個体の脳疾患モデルからリソソーム膜破裂による細胞死の分子メカニズムについて検索した。リソソーム内でHsp70.1と結合することでASMを生理的に活性化しているBMPの機能が、Hsp70.1のカルボニル化とカルパインによる分解によって障害される。その結果、BMPの機能障害によりsphingomyelinの分解が阻害されリソソーム膜を安定化しているceramideが減少するので、リソソーム膜は不安定化し破裂に至ることが証明できた。 さらに、虚血サル脳とアルツハイマー剖検脳とを形態学的ならびにプロテオミクス解析により比較対照し、虚血性神経細胞死と変性性神経細胞死との異同を明らかにした。アルツハイマー剖検脳においては虚血サル脳にみられるのと同様の顆粒空包変性がみられたため、虚血サル脳を用いて生化学的な検索を行った。抗ヒト・BMP抗体を用いて、一過性虚血/再灌流負荷前後のリソソームBMP の量的変化をウエスタンブロッティングと免疫組織化学とで検索した。免疫組織化学による検索では虚血前に比べて、虚血後3日目ではBMP の染色性は明らかに低下していた。また、質量分析による「脂肪酸解析では、一過性虚血/再灌流負荷前後3日目から5日目にかけて、リソソーム膜BMP に含まれるC18:1(オレイン酸)とC22:6(ドコサヘキサエン酸: DHA)の含有量が有意に低下していた。 以上より、虚血性神経細胞死はHsp70.1の酸化障害によってASMの機能異常が生じた結果、膜安定化作用があるceramideが減少しリソソームの破裂が生じるものであることが明らかになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Hsp70.1 と関連分子に着目して神経細胞死の全容を明らかにするという所期の目標は達成された。つまり、Hsp70.1 を中心とした蛋白質-膜脂質間相互作用を解析し、オートファジーに関わる分子連関に着目しリソソーム破裂による神経細胞死のメカニズムについて一定の成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、さらに詳細な分子メカニズムを救命する必要がある。具体的には、虚血サル脳のみならず正常およびアルツハイマー脳組織のホモジネートにアミロイドβの存在下で、ヒドロキシノネナールや過酸化水素による酸化ストレスを与えることで、カルパインによるカルボニル化Hsp70.1の分解がどの程度おきるか、BMPやその脂肪酸組成にいかなる変化がおきるか、そしてこれらが酸性スフィンゴミエリナーゼやリソソーム膜のセラミドに対していかなる影響を及ぼしているかなどをさらに検索し、リソソーム膜破裂の分子機構を完全に解明する必要がある
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