研究課題
高齢者人口が激増した我が国では、脳や心の病気に関わる医療費が激増している。神経細胞死は種々の脳疾患の根本原因であるが、霊長類を対象とした基礎研究が極端に少ないためその機序に関しては不明な点が多い。本研究では虚血サル脳と変性ヒト脳を対比しつつ熱ショック蛋白であるHsp70.1を中心とした蛋白質-膜脂質間相互作用の解析を行った。具体的には、オートファジーに関わる分子連関を検索することで、リソソームの破裂により生じる神経細胞死の全容について究明した。本研究においては虚血性神経細胞死と変性性神経細胞死の分子機構には、「calpain-mediated cleavage of carbonylated Hsp70.1」という共通点があることを発見した。霊長類であるサルの虚血脳およびヒトの変性疾患脳の対比からリソソーム膜破裂による神経細胞死という加齢現象の本質に迫ることができた。Hsp70.1の機能がカルボニル化とカルパイン分解によって障害されるため、ビスモノアシルグリセロフォスフェート(BMP)との結合が障害され、酸性スフィンゴンゴミエリナーゼ(ASM)の機能低下が起きる。その結果、スフィンゴミエリンの分解が阻害され膜を安定化するセラミドが減少しリソソームは破裂することが判明した。オートファジーに関わる分子連関を検索することで、リソソームの破裂により生じる神経細胞死の全容を究明したことが本研究の独創的な点である。すなわち、リソソーム膜の安定性に関わるHsp70.1と関連分子に着目して神経細胞死の全容を解明したことは、難治性脳疾患の病因を究明し、治療法を開発する上で必須な上、医療費削減に役立つと思われる。Hsp70.1という治療上のターゲットが同定された結果、難治性脳疾患に対する画期的治療法が開発され、脳と心の病気に関わる医療費が削減できるであろう。
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