研究課題/領域番号 |
24659544
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小川 豊昭 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 教授 (20194441)
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研究分担者 |
津田 均 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 准教授 (00302745)
古橋 忠晃 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 助教 (50402384)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 発達障害 / アスペルガー障害 / 言語の習得 / 行動規範として倫理とマニュアル / 心的空間の次元性 |
研究概要 |
われわれの平成24年度の研究においては、微細発達障害の判別テストの開発に当たって、①文献的研究と②ケース検討を行うことで、以下の問題について検討した。第一の問題点は、発達障害者と健常者の間の差異は、連続しているのか不連続なのかという点である。従来は、その差異は連続していて、発達障害者と健常者の識別は恣意的なものであるとされてきた。しかし、われわれの研究では、言語の習得の仕方に決定的な違いが見いだされた。それ故、発達障害者、とりわけアスペルガー障害においては、どれほどその個々のケースが健常に見え、健常者として振る舞っていても、言語の習得、言語の構造、情緒のあり方、内界の性質などに本質的に違いのあることが見いだされた。 では、その本質的違いは何かということが、第二の問題点である。アスペルガー障害においては、その内界には行動の規範となる倫理性が欠けている。すなわち健常者では、判断において良いこと悪いことと言う気持ちの良さ不快さという情緒の性質が伴っている。それに対してアスペルガー障害においては、行動の規範に倫理性が無い。規範として機能しているのは、その個体が何らかの仕方で蓄積したいわば「マニュアル」であることが見いだされた。このような本質的な違いが生じた理由として、言語の習得と言語の性質に根本的な違いがあるためと考えることが出来た。健常者では、その個体の心的空間に現れた表象にたいして属性の判断から出発して二次的に存在の判断が行われることによって、その表象が取り入れられる快の性質を帯びているかはき出される不快の性質を帯びているかという感情や情緒が思考と判断の基盤にある。これが倫理性として機能する言語である。ところがアスペルガー障害においては、心的空間における表象にたいして存在の判断の後で二次的に属性の判断がなされるという形で言語が形成されていることが見いだされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究チームが組織されて、定期的に研究の進展状況について発表会を行っている。それによってアスペルガー障害の性質についての理解が深まり、健常とアスペルガー障害の微細な違いを識別する判断力が養われてきた。この発表会の積み重ねによってアスペルガー障害の特徴とされる思考や性質の一覧が作成されて、その項目も充分な量に達している。 具体的には、アスペルガー障害者との面接によって彼ら自身の自己記述や彼らの体験報告から、健常者とアスペルガー者の違いを示す特徴的なエピソードを多く集めることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進は、実際面と理論面の両方で進めていくことになる。実際面としては、今まで蓄積されているアスペルガー障害に特徴的なエピソードを分析して、本質的なものを選び出し、その中からさらに健常者とアスペルガー障害の識別に鋭敏な要素を選び出す。その要素を検出できるようなテスト問題を考案して、それらをテストとしての体裁を整えたものへと仕上げる。 理論面としては、何がこの二者の間の本質的差異であるのかを、言語学の観点から考察していく。また、このアスペルガー障害者の思考のモデルとしてシステム論があるが、システムと言語の本質的な違いについて、理論的考察を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
①研究データーの整理と分析のために研究支援者を雇用する費用。2ヶ月に一回定期的に「微細発達障害研究会」を開催し、専門家を集め、必要に応じて識者によるセミナーを開く。これらのための旅費、人件費、謝金などを出費の予定である。 ②国際精神分析学会で、自閉症の精神分析を専門とする研究者たちと意見交換をお粉予定であり、そのための旅費を予定している。 ③研究の進展によっては、具体的にテストを作成しそれを製本する。その印刷製本の費用。 ④理論的研究が充分に進展した場合は、それを著書の形で出版する、その出版の費用。
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