研究課題
悪性脳腫瘍の予後には低酸素領域が関与していることが知られている。また低酸素状態には従来からよく知られている慢性低酸素に加え、短時間で変化する間欠的な低酸素が存在し、より転移などの腫瘍の悪性形質の原因となっていることが分かってきた。本研究の課題は「低酸素領域の量ではなく変動度合いがグリオーマの治療予後に大きく関わっている」と仮説を立て、これを検証することであった。25年度では、引き続きC6ラットグリオーマモデルを樹立し、PETによって間欠的な低酸素領域の変化を試みた。しかし、18F-MISOのような低酸素トレーサーは標的領域への蓄積や、生体クリアランスおよび放射能減衰に時間がかかるため、間欠的低酸素領域を描出する事はできなかった。次に、電子スピン共鳴(ESR)を用いた腫瘍酸素分圧のイメージングを試みた。ESRの原理は不対電子のスピンを共鳴させて信号を読み取るものであるが、トリチルラジカルという周囲の酸素分圧と相互作用してESRスペクトルを変化させるフリーラジカルを酸素プローブとして用いた。実験モデルとしてはヌードマウス脳室内にU251およびU87グリオーマを接種し、MRIで腫瘍生着を確認した後、ESRイメージングを行った。その結果、トリチルラジカルが腫瘍内に分布していることが確認され、そのESRスペクトル線幅から酸素分圧を算出することでグリオーマ内の酸素分圧画像を取得することに成功した。以上、低酸素ダイナミクスを追跡することは依然として困難であったが、ESRを用いることで、グリオーマ内の低酸素領域を描出することに成功した。24年度では低酸素増感剤ドラニダゾールが低酸素領域の放射線感受性を増強することを明らかにしている。本挑戦的萌芽研究で得られた成果をもとに、今後はESRを用いた酸素イメージングを利用して、間欠的低酸素を含む治療抵抗性領域への薬効評価を行っていく予定である。
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