【目的】本研究の目的は、放射線治療における腫瘍近傍の体内マーカに非接触での積算線量計の機能を持たせた新たな体内マーカを開発することである。放射線照射に誘電体の静電容量が変化することを利用し、体内に埋め込まれたマーカの共振周波数を測定することにより、マーカに照射された線量を非接触で測定できると考えた。 【方法】アンテナコイルとネットワークアナライザを用いて、非接触でコンデンサの静電容量を測定した。その時、リファレンスとなる静電容量はLCRメータを用いて有線で測定し、その結果と非接触での測定結果を比較し測定システムの正当性を検証した。また、現在実際の治療現場では、コイル状の金マーカー(VISICOIL)が使用される場合があるため、VISICOILをアンテナとして用いた場合の性能について数値シミュレーションを行った。 【結果】ネットワークアナライザを用いた非接触測定では、バックグラウンドとして加算されてしまう浮遊容量等の補正を行う事で、1 pF ~ 100 nFという非常に大きな範囲において、LCR Meterを用いた結果と非常に近い数値を得ることができた。従って、我々は非接触でコンデンサの容量を測定する方法を確立する事に成功した。また、シミュレーション結果から、信号を送受信するアンテナコイルの固有周波数と、VISI Coilの固有周波数を高い精度で一致させることにより、これらの4つのVISICOILは10~20cm程度距離が離れても信号が読み出せる事が理論上確認できた。 【結論】体内積算線量を測定する方法として、今までにない全く新しい非接触測定システムを考案し、その測定方法が可能である事を実験的にする事に成功した。また、臨床応用の可能性もシミュレーションにより検討し、現在臨床現場で利用されている大きさのコイルマーカーでも十分に実現可能である事を示すことができた。
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