研究課題/領域番号 |
24659555
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
郡司 修一 山形大学, 理学部, 教授 (70241685)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | PET / TOF / コンプトン散乱 / 偏光 |
研究概要 |
我々はプラスチックシンチレーターを使ったコンプトン散乱型のTOF-PETの原理実証をすることを目的として、研究を行っている。本年度は主に2つの研究を実施した。まず優れた時間分解能を実現するには、2つの機器が必要とされる。まず一つ目がTAC(若しくはTDC)である。そこで新たにNIM規格のモジュールとしてTDCとTACを兼用できるモジュールを開発した。そして、その基礎試験を行ったところ、およそ40psec以下の時間分解能が達成できることが分かった。またコンプトン散乱型PETの場合、プラスチックシンチレーターには様々なエネルギーのデポジットが起こる。従ってシンチレーターから出力されるパルスハイトが違っていても、タイミングのヲークが生じない様に、CFDが必要とされる。そこで既存のモジュールを購入して、その基礎試験を行った。 また我々はプラスチックシンチレーターからの信号読みだしとして、MPPCを使用する事を考えている。プラスチックシンチレーターの時定数は数nsecであり、その高速な時間特性を劣化させない受光素子としてMPPCが最適だからである。一方で、プラスチックシンチレーターやMPPCの時間特性が優れていても、MPPCの出力信号を受ける前置増幅器の時間特性が悪いと良い時間分解能が得られない。そこで非常に高速な前置増幅器が必要となる。そのため、新たにMAR-6というRFアンプを用いた前置増幅器の試作を行った。そしてその回路の性能を評価したところ、確かに高速での動作は確認できたが、回路が多少不安定であり、ノイズが多い事が分かった。 以上で行った研究と平行し、昨年度末に最低限の原理実証のための実験のセットアップを構築した。今後このセットアップを発展させて基礎実験ができるセットアップを構築する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、平成24年度に原理実証のための検出器のセットアップを全て作り終えた後で、平成25年度にその読み出し回路を製作して実験を行う予定であった。しかし実際には、回路の設計に要する時間が一番長くなる事が判明したので、平成24年度に回路開発を先行して行う事とした。そして、原理実証試験に必要とされる検出器の完全なセットアップを平成25年度に構築する事とした。本来の実験計画の順番は前後したが、研究の達成状況はそれほど当初の計画とずれていない。しかし、一方でまだ原理実証のための検出器システムが完全には構築されていない。そのため、当初計画より順調に推移しているとは言えない。そこで、おおむね順調に進展をしているという評価が妥当だと思える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、原理実証のために必要とされる検出器のセットアップを完成させる事をまず第一とする。検出器はプラスチックシンチレーターとその周りを覆うような吸収体シンチレーター、プラスチックシンチレーターからの信号を読み出すためのMPPCと吸収体シンチレーターからの信号を読み出すためのMAPMT(場合によってはMPPCになる)で構成されている。まずこのシステムを作製してしまう予定である。また昨年度はプラスチックシンチレーター用の前置増幅器がノイジーだったため、まずは市販の前置増幅器を使って検出器のセットアップを組む。 原理実証を行うためには、2組の検出器が必要となり、その中心に511keVを正反対に放射する線源が必要となる。そして、2つの検出器でのコインシデンス事象を調べる事になる。このコインシデンス事象がどの程度の時間分解能で取得できるのかをまず調べる。次にプラスチックシンチレーターで散乱されてさらに吸収体シンチレーターにエネルギーデポジットを起こしたイベントを抜き出して、その粗い偏光方向を調べる。そして、2つの検出器で偏光方向がどの様なパターンとして検出されるのかを調べる計画である。 以上の実験から、プラスチックシンチレーターを使ったコンプトン散乱型のPETが実用可能かを調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には研究成果の発表として、1or2回学会発表を行う予定である。そのための旅費が必要となる。また以下の物品を購入予定である。 プラスチックシンチレーター:2本 吸収体シンチレーター:16本 MPPC:2個 MAPMT:2台 検出器のジグ:1台
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