研究概要 |
本研究は、ポストFDG 腫瘍診断薬開発における系統的な設計戦略の構築を目的として、薬剤評価に用いるヒト培養腫瘍細胞の遺伝子発現レベルを解析し、高発現を確認した機能性分子安定発現系を分子プローブのスクリーニングに利用する。中でも、ポストFDG製剤の有力候補である標識アミノ酸製剤に関して、腫瘍で特異的に高発現が認められるアミノ酸トランスポータ及び細胞外排出や尿排泄に関与する薬物トランスポータに対する親和性を評価し、腫瘍集積性との相関からその設計戦略の妥当性を検証する。 まず、DNAチップを用いて4万配列以上の遺伝子発現レベルを測定し、リファレンスRNAにより標準化することで、16種類のヒト培養腫瘍細胞におけるトランスポータなどの特定機能分子の遺伝子発現プロファイリングが直接比較可能となった。また、このデータベースを用いてアミノ酸トランスポータの発現レベルを比較検討し、高発現を確認したアミノ酸輸送系システムLの発現レベルが異なる数種のヒト腫瘍細胞を選択して既に臨床使用されている11C-L-Metとその光学異性体11C-D-Metの細胞集積機序を検討した(Nucl Med Biol, 39: 1213-1218, 2012)。その結果、L-Met は大部分がシステムL で輸送されているのに対し、D-体ではシステムL とともにシステムASCの寄与も大きく、実験に用いた腫瘍細胞における主要な中性アミノ酸トランスポータ発現量をqPCRにより絶対定量した結果、標識体の細胞集積に寄与が確認されたアミノ酸トランスポータの発現量はこれらの細胞集積率と良い相関を示した。さらに、ポストFDG 製剤候補である18F-FACBCの前立腺癌細胞集積への関与が大きかったアミノ酸トランスポータ(J Nucl Med, 52: 822-829, 2011)について、単一発現細胞の作成と集積阻害実験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNAチップを用いて細胞集積実験に用いられる16種類のヒト培養腫瘍細胞の遺伝子発現データベースを構築し、発現プロファイリングが直接比較可能となった。また、主要な中性アミノ酸トランスポータ発現量に関してリアルタイムPCRによる絶対定量系を確立した。これらのトランスポータ遺伝子発現量と細胞集積性との比較検討のモデルとして、既に臨床使用されている11C-L-Metとその光学異性体11C-D-Metの細胞集積機序を検討した結果、標識体の細胞集積に寄与していたアミノ酸トランスポータの発現量はこれらの細胞集積率と良い相関を示したことからその成果を論文投稿し、掲載された(Nucl Med Biol, 39: 1213-1218, 2012)。
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