研究課題/領域番号 |
24659560
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
清野 泰 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50305603)
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研究分担者 |
森 哲也 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 助教 (40397287)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 放射線 / 放射性医薬品 / グリア / PET |
研究概要 |
中枢神経変性疾患の変性過程で、グリア細胞の異常な活性化が起こり、そこから放出される様々な物質が神経細胞の変性に関与していることが報告され、グリア細胞機能をイメージングするプローブの開発が期待されている。そこで本研究では、グリア細胞のエネルギー基質である酢酸の18F標識誘導体(F-18標識フルオロ酢酸およびF-18標識エチルフルオロ酢酸)がグリア細胞のエネルギー代謝を測定可能か検討することを目的とする。 本年度は、まずラット胎仔からのグリア細胞、マイクログリア細胞、神経細胞を取り出し初代培養細胞の調製方法を習得を目的とし、培養を行える環境を整えた。現在、初代培養細胞の調製を試みているが、一部の細胞で培養条件を検討中である。手技を習得するのにまだ時間を要する可能性がある。 またF-18標識フルオロ酢酸の安定供給可能なを合成方法を開発した。このF-18標識フルオロ酢酸を用いて、ラットにおけるPET撮像実験を行った。その結果、微量ではあるがF-18標識フルオロ酢酸が脳内に集積することを見いだした。ただし、個体により集積値にバラツキが認められ、血中の代謝物を解析したところ、個体間で代謝物のプロファイルが異なる事を見いだした。この事は、PETを撮像する前の個体のエネルギー状態を反映している可能性もあり、絶食の必要性などを検討しているところである。また代謝物の解析方法についても、現在最適化を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初代培養細胞の調製手技の習得に予想以上に時間がかかっている。ただし研究代表者のグループでは初めての試みなので、計画の段階から調製手技の習得には時間がかかることを考慮して、研究計画を立てていたので、大きな遅れにはなっていない。また次年度に予定していたPET撮像実験を一部分前倒しして行っているので、トータルとしての遅れはそれほど多くないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も、培養手技の習得は引き続き行うが、あまりに時間がかかる場合は高価ではあるが市販の培養細胞を購入して、集積メカニズムの解明行う。具体的には、半減期の長い[14C]FAおよび[14C]EFAを用いた初代培養細胞における取込実験を行い、これらのプローブが神経細胞ではなくアストラサイトあるいはミクログリアに集積するのか、またその集積メカニズムについて検討する。次いで、ラットにおけるARG実験にて静脈投与された [14C]FAおよび[14C]EFAが脳内でどのような局在性を持って集積し、その集積がアストロサイトあるいはミクログリア特異的であるかどうかを免疫組織染色と組み合わせることにより検討する。その後、ラットを用いたオートラジオグラフィー実験により、脳内の詳細なフルオロ酢酸誘導体の集積分布を検討する。 さらに昨年度から行っているPET撮像実験を引き続き行い、グリア細胞のエネルギー代謝の測定手法を確立する。次いで、病態モデル動物を用いて同様の実験を行い、病態時のグリア細胞のエネルギー代謝が変化するかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も、実験に必要な消耗品の購入に大部分の研究費を充てる計画である。具体的には、放射性リガンドである [14C]FAおよび[14C]EFAは酢酸誘導体の初代培養細胞への集積量の検討およびラットでのオートラジオグラフィー実験に必要である。細胞実験に必要な消耗品として、フラスコ、プレート、培地、血清、その他必要試薬を計上している。これらの消耗品は、初代培養細胞を用いた実験を遂行するために必要である。動物実験では、雄性SDラットおよび妊娠14日以降のSD妊娠ラットの使用を予定している。旅費に関しては、国内学会1回を情報収集や成果発表を目的に計上している。これらの出張費は本研究を遂行するための情報収集および成果報告の意味から考えても必要最低限の回数であると考える。
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