中枢神経変性疾患の変性過程で、グリア細胞の異常な活性化が起こり、そこから放出される様々な物質が神経細胞の変性に関与していることが報告され、グリア細胞機能をイメージングするプローブの開発が期待されている。そこで本研究では、グリア細胞のエネルギー基質である酢酸の18F標識誘導体がグリア細胞のエネルギー代謝を測定可能か検討することを目的とする。 まずアストロサイトおよびミクログリアを培養して、18F標識フルオロ酢酸の細胞内集積を検討した。その結果、18F標識フルオロ酢酸添加60分後のミクログリアへの放射能集積はほとんど認められなかった。さらにリポポリサッカライドを添加することによって活性化したミクログリアへの18F標識フルオロ酢酸の集積を同様に検討したが、活性化ミクログリアへの集積も観察されなかった。一方アストロサイトへの18F標識フルオロ酢酸の集積を検討したところ、添加60分後に4.15 ± 1.14 %ID/mg proteinの集積が認められた。以上の結果より、18F標識フルオロ酢酸はアストロサイトへ集積することが示唆された。 ついでラットを用いて18F標識フルオロ酢酸のPETイメージング実験を行った。18F標識フルオロ酢酸は投与早期から脳内に集積し、その集積が維持されることが認められた。一方、血中放射能のクリアランスは速いことも観察された。このことより18F標識フルオロ酢酸を用いて、脳内グリア細胞機能、特にアストロサイトの機能をイメージングできる可能性が示された。
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