研究概要 |
東京電力(株)福島第一原子力発電所の爆発事故以降、放射性セシウムの内部被爆が問題となっている。放射性セシウムは、インスリンの標的臓器である筋肉組織に取り込まれることが知られている。筋肉組織に取り込まれた放射性セシウムが、酸化ストレスの惹起やミトコンドリアの障害により、糖代謝に影響を及ぼすことが危惧される。 本研究は、放射性セシウム内部被曝がインスリン感受性に影響を明らかにすることも目的とした。 申請者の居住地で、低線量であるが放射性セシウム(1μSV/h)に汚染された土壌を、オートクレーブにて、高温高圧滅菌し、放射性セシウム以外の微生物等を除去した。また、放射性セシウムが検出されない地域より採取した土壌を同様の方法で滅菌したものをコントロールとして用いた。これらの土壌を床敷に混入し、定期的に食餌量と体重測定を施行し、5週間後に正常血糖・高インスリンクランプ検査にてインスリン感受性を評価した。 通常餌群において、5週間の放射性セシウムの有無により、食事摂取量、体重、空腹時血糖値に有意な差は認めなかった。正常血糖高インスリンクランプ検査にて、通常餌群において、全身のインスリン感受性を示すGlucose infusion rate, 末梢組織でのインスリン感受性を示すInsulin-stimulate glucose disposal rate, 肝臓でのインスリン感受性を示すclamp Hepatic glucose output, 脂肪組織でのインスリン感受性を示すclamp FFAに有意な変化は認めなかった。 以上の結果より、正常耐糖能状態では、5週間の放射性セシウム内部被曝はインスリン感受性に影響を及ぼさない可能性が示唆された。 現在、高脂肪食負荷によるインスリン抵抗性モデルで検討中である。
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